怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

パソコンに映る幼い日の記憶 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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それは、何の変哲もない平日の夜だった。

仕事を終え、自宅に戻った僕は、いつものようにパソコンの電源を入れた。普段はニュースを読んだり、動画を見たりして過ごす。だが、その日は少し違っていた。

画面が起動し、デスクトップが表示された瞬間、知らないフォルダが目に入ったのだ。

「Childhood.mp4」

奇妙な映像の始まり

そのフォルダには、たった1本の動画ファイルが入っていた。

「……何だこれ?」

覚えがない。誰かが送ってきた可能性も考えたが、メールやメッセージに何の通知もなかった。

気味が悪いながらも、好奇心には抗えなかった。クリックすると、再生が始まった。

見覚えのある場所

最初に映ったのは、どこか懐かしい風景だった。

古い木造の家――それは間違いなく、僕が幼少期に過ごした祖父母の家だった。

しかし、撮影者が誰なのかはわからない。カメラはまるで僕の視線そのもののように、庭から家の中へと自然に移動していった。

「どうしてこんな映像が……?」

祖父母の家は僕が小学生の時に取り壊された。それ以降、この家を見ることはなかったはずだ。

幼い自分との遭遇

画面が室内に切り替わった瞬間、僕の心臓は止まりそうになった。

映像の中には、幼い頃の僕自身が映っていたのだ。

5歳か6歳だろうか、小さな体で廊下を走り回り、笑っている。それだけなら懐かしい思い出として片付けられるかもしれない。

だが、その笑顔は、次第に曇り始めた。

映像の中の「幼い僕」は、突然立ち止まり、何かをじっと見つめている。

その視線の先――廊下の突き当たりに、暗がりの中で人影のようなものが見えた。

不思議な出来事の記憶

画面の中の自分は、その人影に向かって何かを話しかけている。だが、音声はない。ただ、不安そうな表情を浮かべながら、一歩ずつその影に近づいていく。

そして、影がゆっくりと振り向いた――その顔は、真っ白だった。目も鼻も口もない。

「……!」

画面の中の自分が逃げ出し、廊下を走り去るのを見て、ようやく思い出した。

あれは、僕が幼い頃に体験した「何か」だった。

記憶が蘇る

その出来事は、ずっと記憶の底に封じ込めていた。あの日、祖父母の家で遊んでいた僕は、確かに廊下の奥で人影を見た。

そして、何もない顔をした「それ」が振り向いた瞬間、恐怖に駆られて泣きながら逃げ出したのだ。

その後、家族に話しても誰も信じてくれなかった。

「子どもの想像力が豊かなだけだよ」と言われ、次第に自分でも夢だったのではないかと思うようになった。

だが、今この瞬間、画面に映るその光景は、紛れもなく現実だったことを証明している。

映像が語る真実

映像は続いていた。

廊下を走る「幼い僕」の後を、あの無表情な影がゆっくりと追いかけてくる。

そして、次の瞬間、画面が突然暗転した。

数秒の静寂の後、画面に文字が表示された。

「見つけた。」

その文字を見た瞬間、部屋の空気が凍りついたように感じた。背後に誰かの気配を感じたのだ。

振り返る勇気がなかった。画面を見ると、再び同じフォルダが表示されていた。

だが、今度はファイル名が変わっていた。

「続きは、すぐそばで。」

不可解な結末

その後、僕はパソコンを閉じ、部屋中の明かりを全てつけた。だが、それ以降、あのフォルダも映像もどこにも見つからなかった。

夢だったのだろうか? それとも……。

いまだにあの映像の真相はわからない。ただ一つ確かなのは、あの出来事が僕の記憶に深く刻まれ、今も心をざわつかせているということだ。

「見つけた」――それは誰の言葉だったのだろうか。



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