目次
不意に現れた映像
ユウコは、平凡な日々を送る30代の女性だった。在宅で仕事をしている彼女は、日常のほとんどをパソコンの前で過ごしている。
ある日の午後、いつものように仕事を進めていると、突然パソコンの画面がチラつき始めた。
「……何これ?」
ウィンドウが一瞬消え、黒い画面に切り替わる。次の瞬間、知らない映像が画面いっぱいに映し出された。
見たことのない風景
画面に映っているのは、どこか懐かしさを感じる田舎の風景だった。青い空、黄金色の麦畑、遠くにそびえる緑の山々――すべてがどこか温かい雰囲気を纏っている。
「何これ……映画のワンシーン?」
ユウコは作業の手を止め、その映像を見つめた。だが、どんな動画ファイルを開いた覚えもなく、インターネットにつながるウィンドウも開いていない。
少女の登場
映像の中に一人の少女が現れた。麦畑の中を駆け回り、青空に向かって凧を飛ばしている。笑い声が聞こえてきそうなほど無邪気な姿に、ユウコの心が温かくなった。
「どこかで見たことがあるような……」
彼の姿がどこか懐かしく、心に引っかかる。
記憶の奥底から
少女がカメラの方に向かって手を振る。その仕草にハッとしたユウコは、幼い頃の記憶が蘇った。
「これ……私の……?」
彼女が小さな頃、家族旅行で訪れた田舎の風景。その時に兄が撮影してくれた映像だ。
画面の中で少女は、カメラの後ろにいる「誰か」と楽しそうに話している。
消えた映像
映像は突然途切れ、画面が元のデスクトップに戻った。
「え……今のは何だったの?」
慌てて映像ファイルを探したが、どこにも保存されていない。再び再生することもできなかった。
小さな奇跡
ユウコは手を止め、しばらく呆然と画面を見つめた。
「……ありがとう。」
少女は幼い頃の自分。そして、映像のカメラを持っていたのは、数年前に亡くなった兄だった。
兄との思い出が、忘れかけていた温かな記憶を呼び起こしてくれたのだ。
終わらない余韻
その日から、ユウコは少しだけ明るい気持ちで過ごせるようになった。
「また、いつか見られるといいな。」
兄からのささやかな贈り物のようなその映像は、彼女の心にほのかな光を灯し続けた。
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