目次
海辺のドライブ
休日の昼下がり、ヒロシは友人のタカシと一緒に海辺へドライブに出かけた。
天気は快晴。海岸線を走る車窓からは青い海と空が一面に広がり、二人は久しぶりののんびりした時間を楽しんでいた。
「たまにはこうやって何もしないで景色を眺めるのもいいな。」
「そうだな、せっかくだから景色をもっと楽しむか。」
タカシは後部座席から双眼鏡を取り出した。趣味のバードウォッチング用だが、この日は気まぐれで持ってきていた。
不可解なものを見つける
ヒロシとタカシは人気の少ない海岸近くの駐車場に車を停め、双眼鏡を交代で使いながら、水平線を眺めていた。
最初はただの波や遠くを行き交う船が見えるだけだったが、ふとタカシが「あれ……?」と呟いた。
「どうした?」
「いや、ちょっとおかしいな。あそこ、人みたいなのが浮かんでる……。」
タカシが指差した先をヒロシが双眼鏡で覗くと、確かに海面に何かが浮かんでいる。
それは人型の何かだった。だが、人間にしては動きが不自然だ。まるで棒のように硬直しているのに、波に揺られてゆっくりと漂っている。
見られている感覚
「何だよ、あれ……」
ヒロシが双眼鏡を覗き続けていると、その人型が突然くるりとこちらに向きを変えた。
「えっ……?」
次の瞬間、その人型が顔を上げるように動き、明らかにこちらを見ていることがわかった。
双眼鏡越しに感じる視線。その目は不自然に大きく、真っ黒だった。
近づいてくる
タカシに双眼鏡を渡し、「おい、見てみろ!」と促すと、タカシも同じように驚いた。
「これ……動いてる。いや、近づいてきてる!」
人型は波に揺られるどころか、自ら動いているように見えた。双眼鏡越しにじっとこちらを見つめながら、海岸に向かって進んでいるのだ。
その異常さに二人は恐怖を覚え、双眼鏡を置いてその場から立ち去ろうとした。
見たものを忘れられない
車に戻る途中、ヒロシはどうしても気になり、最後にもう一度双眼鏡を覗いた。
だが、人型の姿は消えていた。
「いなくなってる……。」
「何だったんだろうな、あれ。」
二人はそれ以上その話をする気にもなれず、車を出してその場を離れた。
後を追う“それ”
その夜、ヒロシの自宅で、窓の外から波の音が聞こえた。
「……おかしいな、ここ海の近くじゃないのに。」
恐る恐る窓を開けると、家の前に水たまりのような跡が続いているのが見えた。その水たまりは、家の中に向かうように続いていた。
振り返ると、背後に何かが立っていた――
二度と双眼鏡を手にしない
翌朝、ヒロシはタカシに連絡を取ったが、彼もまた奇妙な夢を見たという。夢の中で海に引きずり込まれるような感覚だったと語った。
二人はその日を境に、海に近づくことも、双眼鏡を手にすることもなくなった。
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