目次
最悪の上司
タケシは普通のサラリーマンだった。仕事に情熱を注ぐタイプではないが、無難に業務をこなし、平穏な生活を望む、ごく一般的な会社員だ。
だが、そんな彼の日常は、最近の「クラッシャー上司」の登場で崩れてしまった。
新しく部署の上司となったカトウは、業績を上げるためには部下を潰すこともいとわない男だった。
怒鳴る、嫌味を言う、無理な納期を押し付ける――同僚たちも皆、彼の下で精神的に追い詰められていた。
「なんでこんな人の下で働かなきゃいけないんだよ……。」
タケシもまた、カトウから日々のようにストレスを受けていた。
路地裏の占い師
そんなある日、タケシは昼休みに外で気分転換をしようと、オフィス近くの路地裏にある定食屋で食事を済ませた。会社に戻る途中、ふと視界に入ったのは、小さなテーブルに座る一人の占い師だった。
占い師は中年の女性で、古びたタロットカードと水晶玉を置いていた。
「あなた、何か悩んでいるでしょう?」
通り過ぎようとしたタケシに、占い師が声をかけてきた。
「別に……。」
言い返したものの、その目は鋭く、まるで心を見透かされているようだった。
「あなたの悩み、解決できますよ。」
時計を見ると、昼休みにはまだ少し余裕がある。半信半疑のまま、タケシは占い師の前に座った。
占いの結果と奇妙なドリンク
占い師はタロットカードをめくりながら言った。
「あなたの上司……その人は最悪ですね。そんな人の言うことは聞かなくていい。」
図星だった。さらに占い師はこう続けた。
「これを飲ませなさい。そうすれば、すべてが解決します。」
そう言って渡されたのは、怪しいドリンクだった。青い液体が小さな瓶に入っている。
「いやいや、こんなの上司に飲ませられませんよ……。」
タケシは困惑しながらも、何となく受け取ってしまった。
勝手に飲み始めた上司
会社に戻り、デスクの上にドリンクを置いたまま考え込んでいた。もちろん、こんなものを上司に飲ませるつもりはなかった。
そこに現れたのが、問題の上司カトウだ。
「おいタケシ、お前の進捗が遅いせいで全部ズレてるんだぞ!本当に使えない奴だな。」
嫌味を投げつけられ、タケシは心の中でため息をつく。その時、カトウの目がデスクの上のドリンクに留まった。
「おい、これなんだ?うまそうじゃないか。」
「えっ、いや、それは……!」
タケシが止める間もなく、カトウは瓶を開け、一気に飲み干してしまった。
上司の消失
翌日、カトウは会社に来なかった。
「どうしたんだろうな?」
同僚に聞くと、信じがたい噂を耳にした。
「精神崩壊したらしいぞ。昨日の夜、突然大声で何かを叫んで、自宅で暴れていたとか。」
タケシの心臓が跳ねた。あのドリンクが原因ではないかと思ったが、そんな馬鹿げたことが現実で起こるはずがない、と無理やり自分に言い聞かせた。
占い師の行方
その後、タケシは路地裏の占い師を探したが、彼女の姿はなかった。
同じ場所にいた他の店主に尋ねても、「そんな占い師は知らない」と言われるばかりだった。
その後の平穏
それ以来、タケシの職場は平穏を取り戻した。新しい上司は温厚で、公平な人物だった。
しかし、タケシの心の中には今でも問いが残っている。
「あのドリンクは一体何だったのか?」
あるいは、あの占い師とドリンクが何かを引き起こしたのか――それは今も分からない。
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