目次
トンネルで見た“ノイズ”
休日の昼下がり、ユウタは家族を迎えに車で遠くの街へ向かっていた。
目的地へ行くにはいくつかのトンネルを通る必要がある。途中の一つ、薄暗い山間のトンネルに差しかかった時、ユウタは車内で不思議な現象を感じた。
目の前に、まるでテレビのノイズのようなちらつきが一瞬広がったのだ。
「……気のせいか?」
視界が元に戻ると、トンネルの出口が見えていた。だが、その時、ユウタは説明できない違和感を覚えた。
奇妙な森の景色
トンネルを抜けると、そこには緑豊かな森が広がっていた。
しかし、何かが違う。
木々の形が異様なのだ。枝が異様に長く、葉の色が青みがかかっている。よく見ると、幹には奇妙な模様が走り、静寂の中でかすかに振動しているようにも見えた。
「なんだ、この森……。」
いつもの景色のはずなのに、見慣れない風景にユウタは車を停め、しばらく周囲を観察した。しかし、何も手がかりが見つからないまま、再び車を走らせることにした。
“ねじれた”町
森を抜けると、次第に町の景色が広がり始めた。しかし、その町は、ユウタが知っている町とはまるで違っていた。
家々の屋根は異様に尖っており、壁や窓枠が不規則にねじれている。まるで建物全体が溶けているかのように歪んでいるのだ。
さらに奇妙だったのは、通りを歩く人々の姿だった。彼らは皆、顔が異様に長く、手足が細長い。しかも、口元には笑みが貼り付いたような表情を浮かべていた。
「……何なんだ、この町……?」
ユウタは恐怖を抑えながら車を走らせたが、次第に道がわからなくなってきた。標識には読めない文字が書かれており、全く見覚えのない道に迷い込んでいた。
不思議な住人との出会い
ある交差点で車を停めると、奇妙な人影が近づいてきた。それは、長い腕を持った老婆のような人物だった。
「迷っておられるのですか?」
その声はどこか穏やかだったが、耳に響くような不気味さも含んでいた。
「ええ……ここは一体どこなんですか?」
老婆はゆっくりと微笑みながら言った。
「ここは、あなたが“見るべきものを見る”ための場所です。」
その言葉にユウタはますます困惑したが、老婆が指さした道を進むことにした。
トンネルへの帰還
指示通りに進むと、再び森の中に入った。すると、前方に見覚えのあるトンネルが現れた。
「これが戻る道なのか……?」
恐る恐るトンネルを通り抜けると、またもや視界にノイズが走った。そして次の瞬間、ユウタは見慣れた景色に戻っていた。
普通の森、普通の道、そして普通の町並み――だが、何かが変わったような気がしてならない。
変化の余韻
家族を迎えに行き、無事に帰宅した後も、ユウタの頭からあの奇妙な光景が離れなかった。
数日後、ふと車のダッシュボードを開けると、そこに見覚えのない小さな鍵が入っていた。
「……これ、いつの間に?」
その鍵には、あのねじれた町の家々にあった奇妙な模様が刻まれていた。
「トンネルを通る時、見えるはずのないノイズが走ったら、もしかしたらあなたも“ねじれた世界”を垣間見ることになるかもしれません――。」
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