僕の生活は単調そのものだった。
デイトレーダーという仕事柄、朝から晩までパソコンの前に座り、画面に表示される数値とにらめっこする毎日。友人もいなければ、特に趣味もない。そんな僕にとって唯一の癒しが、ペットのハムスターだった。
名前は「コロ」。つぶらな瞳とふわふわの毛並みが可愛くて、彼の仕草ひとつひとつに心が和らいだものだ。
目次
コロとの日々
コロが僕の家に来たのは、2年前のことだった。
彼は活発で、回し車をぐるぐると走り回るのが大好きだった。最初はペットショップで勧められた餌だけを与えていたけれど、次第に彼の好き嫌いを把握し、たまに自分の食事から少しだけお裾分けすることも増えた。
焼き魚のかけらやパンくず、小さなウィンナーの一片――コロはどれも喜んで食べてくれた。
そんな彼の姿を見るのが僕の唯一の楽しみだった。
別れの日
2年と数か月が過ぎた頃、コロは年を取っていった。
足腰が弱くなり、回し車で遊ぶことも減った。毛並みもぼさぼさになり、寝ている時間が増えた。それでも、僕が食べ物を与えると小さな手で一生懸命持ち上げて食べる姿が愛おしかった。
ある朝、コロはケージの中で静かに息を引き取っていた。
亡骸を庭に埋め、線香をたいた。その香りと煙を見ながら、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになった。
「もう会えないんだな……」
そう思うと、涙が止まらなかった。
奇妙な出来事
それから数週間。食事のたびに、無意識に「コロに分けてあげなきゃ」と思う自分に気づいては、胸が締めつけられる日々が続いた。
そんなある夜、奇妙な出来事が起こった。
夜食にとパンを焼き、机に向かっていた時だ。背後から「カサカサ」という音が聞こえた。
「……コロ?」
振り返ると、そこには何もない。ケージも片付けてしまった部屋に、音の正体があるはずもなかった。
小さな足跡
その翌朝、さらに不思議なことが起こった。
机の上に置いたパンくずが少しだけ動いていたのだ。まるで誰かが食べようとしたかのように、わずかにずれていた。
「まさか、ネズミ?」
そう思い、部屋を念入りに確認したが、侵入の形跡はなかった。
その時ふと、視界の端に庭が映った。埋葬したコロの場所から、小さな花が一輪咲いていたのだ。
コロのメッセージ
僕はその花を見て確信した。
きっと、コロが最後に僕に会いに来てくれたのだ、と。
それからというもの、コロの思い出が悲しみだけではなく、どこか温かいものに変わった。食事の時も、「あの時のコロならこれを喜んでくれただろう」と思い出して微笑むことが増えた。
花は今も庭に咲き続けている。その隣に立つと、不思議と心が癒されるのだ。
小さな命の大きな存在
コロのいない生活には、まだ慣れない部分もある。でも、彼が僕に与えてくれた癒しと喜びは、何にも代えがたいものだった。
彼がいなくなった後も、こうして僕に温かい思い出を残してくれたことに感謝している。
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