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朝の謎の列車に乗ると“過去の自分”に会える話 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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朝の不思議な列車

タカシは郊外の住宅地に住む30代の会社員だった。毎朝、同じ電車に乗り通勤する退屈な日々が続いていた。

しかしある日、いつもの駅に向かう途中、奇妙なことに気づいた。

駅のホームに見たこともない列車が停まっていたのだ。車体は黒く、窓には薄い靄がかかっていて中の様子が全く見えない。

「こんな列車、いつから走ってたんだ?」

その日は急いでいたため見送ったが、翌日も同じ時間にその列車が現れた。しかも、周囲の誰もその列車に目を向けていない。

列車に乗る決断

3日目、タカシはついに意を決してその列車に乗り込むことにした。

扉が開くと、車内は驚くほど静かで、他の乗客も見当たらない。タカシは窓際の席に腰を下ろした。

車内アナウンスはなく、列車は音もなく滑るように発車した。窓の外には見慣れた景色ではなく、薄暗い霧が立ち込める不気味な風景が広がっていた。

「これ、本当にどこに向かってるんだ……?」

その時、突然車内にアナウンスが流れた。

「次の停車駅は“あなたの過去”です。」

過去との出会い

列車が停車し、タカシが降り立った場所は見覚えのある街並みだった。

「ここは……俺が子どもの頃に住んでいた町?」

懐かしさと驚きで胸がいっぱいになりながら歩いていると、ふと公園のベンチに座る少年を見つけた。

その少年は、間違いなく10歳の頃の自分だった。

「え、どうして俺が……?」

少年の自分は何かに悩んでいるようだった。タカシが恐る恐る声をかけると、少年は顔を上げた。

「君は誰?」

「俺は……未来の君だよ。」

少年は驚きながらも、タカシの話を静かに聞いていた。そして、彼が学校でいじめにあっていることや、家での孤独を感じていることを話し始めた。

「そんなこと、忘れてたな……。」

大人になったタカシは、過去の自分を励まし、少しずつ笑顔を取り戻させていった。

列車での別れ

再び列車の発車ベルが鳴った。

「もう時間だ。」

少年の自分に手を振り、列車に乗り込むタカシ。扉が閉まり、車両が動き出すと、次第に少年の姿が見えなくなっていった。

窓の外の景色が変わり、今度は高校時代の街並みに切り替わった。

毎朝続く旅

それ以来、タカシは毎朝その列車に乗るようになった。

列車は彼を学生時代、社会人としての初めての日、失恋の夜など、さまざまな過去に連れて行った。

過去の自分と向き合うことで、タカシは忘れていた思いや失われた自信を取り戻していった。

現実への帰還

ある日、列車に乗ると車内アナウンスが響いた。

「次は終点、未来行きです。」

その日を最後に、その謎の列車は現れなくなった。だが、タカシは過去の自分たちとの対話を通じて、大切なものを取り戻していた。



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