怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

毎朝聞こえる音楽が導く異世界への扉 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

都会の喧騒から離れた小さな街で一人暮らしを始めた頃のことだ。

静かな環境での生活は心地よく、朝の目覚めも清々しいものだった――最初のうちは。

ある日、早朝5時ちょうど。どこからともなく奇妙な音楽が聞こえてきた。

ピアノの旋律のようだが、どこか異国の楽器のような響きも混じる。その音楽は美しく、耳に残るのにどこか不安を掻き立てるようなものだった。

【音楽の正体】

最初は近所の誰かが鳴らしているのだろうと思ったが、その音楽は翌日も、さらにその翌日も、同じ時間に聞こえてくる。

音の方向ははっきりとせず、部屋の中で響いているような、外から聞こえるような不思議な感覚だった。

「一体どこから聞こえてるんだ…?」

気になった私は、音のする方向を探るべく、翌朝早起きをすることにした。

【音楽に導かれる】

5時きっかりに音楽が鳴り始める。私は音のする方に足を向けた。

最初は自分の部屋の窓辺に立っていたが、音が外から聞こえていることに気づき、パジャマのまま表に出る。

音楽は一定の間隔を保ちながら、私を誘うように響く。住宅街を抜け、小道を進むと、音が少しずつ大きくなる。

気づけば、音楽は廃墟になった古い教会の方から聞こえていた。

【廃墟の教会】

教会の扉は錆びついているが、かすかな隙間から中に入ることができた。

中は埃まみれで、木の椅子や祭壇が朽ち果てている。しかし、奥の方から光が漏れており、音楽もその方向から流れている。

祭壇の裏手に回ると、そこには古びた木製の扉があった。扉の表面には、見たことのない文字が彫られている。

音楽はその扉から鳴っていた。

【異世界への扉】

私は扉に手を伸ばした。触れると、ひんやりと冷たい感触が伝わる。

扉をゆっくり開けると、眩しい光が溢れ出し、一瞬視界が真っ白になった。

目が慣れると、そこには現実ではありえない光景が広がっていた。

空には二つの太陽が浮かび、草原は青く光る。木々の葉は紫色で、空を舞う鳥は虹色の羽を持っていた。

「ここは…どこなんだ?」

足元には、扉と同じ文字が刻まれた石碑が立っていた。それをじっと見つめていると、背後から足音が聞こえた。

【謎の存在】

振り返ると、そこには長いローブを纏った人影が立っていた。顔はフードに隠されて見えない。

その人物は静かに手を挙げ、私に近づくと、低く響く声で言った。

「ようこそ、選ばれし者よ。」

「選ばれし者…?」

私が問い返すと、ローブの人物は続けた。
「この音楽を聞き、この地にたどり着けたのは、君が初めてではない。しかし、この扉を閉じるか、進むかは君の選択だ。」

「進む…?」

彼は答えず、私の手を軽く取ると、広がる光景を指差した。

【選択】

目の前の風景は夢のように美しかったが、現実に戻れる保証はなさそうだった。

私は足を止め、背後の扉を振り返った。扉は静かに音を立てて閉まりつつあり、その向こうからはもう音楽は聞こえなかった。

「もし進んだら、どうなるんだ?」

ローブの人物は再び言った。
「進めば君の願いが叶う。しかし、現実に戻る道は閉ざされる。」

私は迷いながらも、扉に向き直り、その場を離れることを選んだ。

【エピローグ】

気づけば、自分のベッドの中だった。時計は朝の5時を少し過ぎたところ。

「あれは夢だったのか…?」

そう思いながらも、耳を澄ますと、もうあの音楽は聞こえなかった。

それから数日後、あの教会が完全に取り壊されたという話を聞いた。まるで扉の存在ごと消え去るかのように。

もし朝5時に不思議な音楽が聞こえたら、それは異世界への招待状かもしれません。ただし、その扉を開けるかどうかは、あなた次第です。



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