田中雄介は、倉庫で書類整理をしていると、一通の古びた封筒を見つけた。封筒には「空に現れる奇妙な雲の観察記録」と書かれており、中には数枚の写真と調査書類が収められていた。
封筒の中を確認すると、説明文とともに奇妙な雲を撮影した写真が添付されていた。雄介は興味を引かれ、その調査書類を読み始めた。
奇妙な雲に関する調査書類
調査対象:奇妙な雲
観察者:N.S.(アマチュア天文家)
観察期間:平成11年6月1日~平成11年7月31日
観察地点:〇〇市郊外の丘
目次
背景
平成11年6月初旬、〇〇市郊外で空を観察していた際、奇妙な雲が一瞬だけ現れる現象を確認しました。この雲は通常の雲と異なり、数秒間だけ空に現れてはすぐに消えるという特徴を持っています。また、その色彩と形状は通常の雲とは大きく異なっていました。
本調査では、この奇妙な雲について記録を取り、現象の解明を試みることを目的としました。
奇妙な雲の特徴
観察を通じて確認された奇妙な雲の特徴は以下の通りです。
(1) 発生時間と持続時間
この雲は主に昼間、晴天時に観測される。特に午後2時から4時の間に現れることが多い。
持続時間は極めて短く、わずか3秒から5秒程度で消えてしまう。
(2) 色彩
通常の白や灰色ではなく、紫、黄緑、オレンジなど、鮮やかで異質な色を持つ。
同じ雲でも一瞬で色が変化することがある。
(3) 形状
明確な形を持つ場合が多く、時には幾何学的な模様のようにも見える。例として、正円や直線的な形状、さらには動物のような形に見えることもあった。
動きが速く、形成と消滅が非常に迅速である。
観察記録(抜粋)
6月3日
晴天の午後3時15分、東の空に紫色の雲が出現。直径は約5メートル程度と推測される。3秒ほどで消えた。雲は直線的な形状をしており、まるで人為的に描かれたようだった。
6月10日
午後2時45分、黄緑色の雲を確認。形状は鳥のように見えたが、すぐに崩れ消えた。このとき、風速はほぼ無風状態で、雲が自然現象である可能性は低いと感じた。
6月20日
午後3時30分、北西の空に濃い赤色の雲を確認。この雲は非常に鮮明で、直径10メートル以上と推測される。数秒後、溶けるように消えた。この現象は写真に記録することができた。
写真について
書類には、観察中に撮影された複数の写真が添付されていた。雄介は写真を一枚一枚確認した。
写真には、空の中に一瞬だけ現れる奇妙な雲が写っていた。
一枚目の写真には、紫色の雲が丸い形をして浮かんでいた。空の青と対比する鮮やかな紫が、不自然なまでに目を引いた。
二枚目の写真には、黄緑色の雲が鳥のような形で現れていた。雲は鮮明だが、周囲の空気に馴染んでおらず、まるで空に貼り付けた絵のようにも見える。
三枚目には、濃い赤色の雲が撮影されていたが、雲の縁がぼやけ、何かが動いているような印象を与えていた。
写真はどれも鮮やかだったが、雲の出現が瞬間的であるため、撮影の焦点がやや甘くなっているものもあった。雄介はその奇妙な美しさに見入ってしまった。
調査の結論
奇妙な雲については、現段階では以下のように結論付けられる。
自然現象ではない可能性
通常の雲の形成とは異なるため、未知の気象現象または何らかの人工的な要因が考えられる。
目撃範囲の限定性
観察地点は〇〇市郊外の丘に限定されており、他の地域での目撃報告は確認されていない。
さらなる調査の必要性
雲が現れるメカニズムや色彩の原因を解明するためには、気象学や物理学の観点からの詳細な研究が求められる。
注意事項
観察にあたっては、特定の時間帯(午後2時~4時)に注意を払うこと。
雲が現れる場所や動きを追跡するため、カメラや録音機器の準備が推奨される。
読み終えて
田中雄介は、調査書類を閉じ、写真をもう一度見つめた。鮮やかな雲の色彩と形状はどこか幻想的で、現実のものとは思えなかった。
「この雲、一度でいいから実際に見てみたいものだな…」
そう呟いたものの、その奇妙な現象が自然の摂理を超えた何かであると考えると、ほんの少し不安も覚えた。
雄介はこの書類を「未解明の自然現象」に分類し、棚に戻した。そして次の封筒を手に取った。
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