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空に現れる不思議な雲の正体 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は空を見るのが好きだ。青空、夕焼け、星空――どれも美しく、毎日違う表情を見せてくれる。その変化を眺めるのが、私にとってのささやかな楽しみだった。しかし、最近、空に異変が起きている。

奇妙な雲の出現

ある日、いつものように空を見上げていると、突如として奇妙な雲が現れた。鮮やかな紫色をしており、まるで絵の具を空にぶちまけたような形だ。しかし、その雲はわずか数秒で跡形もなく消えた。

「何だったんだろう?」

最初は目の錯覚かと思ったが、それ以降もその奇妙な雲は現れ続けた。

翌日は黄緑色の雲。歪んだ円のような形をしていたが、またしても数秒で消えた。その翌日は赤くて三日月のような雲。そしてその次の日は、青く螺旋を描いたような雲…。

不思議なことに、それらの雲は誰も見ていないようだった。家族に話しても「何言ってるの?」と笑われるだけ。友人に写真を見せようとカメラを構えても、雲が現れるタイミングはいつも突然で、消えるのも一瞬。撮影する暇もなかった。

次第に形を持ち始める雲

奇妙な雲が現れる頻度は日に日に増していった。形も色も様々で、初めは抽象的だったその形が、次第に具体的なものに変わり始めた。

ある日現れた雲は、人間の手の形をしていた。紫色のそれが空に現れた瞬間、何かがこちらに向かって手を伸ばしているような錯覚を覚え、思わずぞっとした。その次の日は、顔のような形をした雲が現れた。ぼんやりとした輪郭の中に、瞳のようなものが動いているのが見えた気がして、思わず目をそらしてしまった。

異変を感じる日常

その頃から、日常にも違和感を感じ始めた。

夜中、窓の外から空を見上げると、雲がないはずの夜空にうっすらと何かが漂っている。昼間も空に意識を向けると、視界の隅で何かが動いたように見えることが増えた。

さらに、不思議なことに、その雲を見るようになってから私の体調もおかしくなった。頻繁に頭痛がするようになり、背中には原因不明の寒気を覚える。医者に行っても「特に異常はない」と言われるだけだった。

最も恐ろしい雲

そしてある日、最も恐ろしい雲が現れた。それは黒く、不気味に渦を巻いていた。形はまるで巨大な目。空全体を見渡しているかのようだった。私は息が詰まるような感覚を覚え、その場に立ち尽くした。

次の瞬間、空から耳をつんざくような音が響いた。それは雷や風の音ではなく、低くうねる声のようなもので、何かが私に語りかけているようだった。言葉ではないが、確かに「見られている」と感じた。

私は恐怖のあまり、その場から逃げ出した。

空を見られなくなった日々

その日以来、私は空を見ることができなくなった。窓から見える空もカーテンで隠し、外出時も視線を下げるようになった。それでも、視界の端で何かが蠢いているような感覚に襲われることがある。

奇妙な雲が何だったのか、今でも分からない。ただ、一つだけ確信していることがある。それらは私にだけ見えていた。そして、私のことをじっと見ていたのだ。



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