目次
プロローグ
私の人生において、数えるほどしか体験していない不思議な出来事がある。それは、「乾かし屋」という奇妙なお店との出会いだ。
そのお店は、私がびしょ濡れで困っているときに限って、どこからともなく現れる。
第一章:初めての出会い
最初に乾かし屋と出会ったのは、大学時代のことだった。
その日は突然の夕立に降られ、傘も持っていなかった私は、ずぶ濡れで最寄りの駅まで走った。しかし、駅のホームには雨宿りできる場所がなく、服も靴も水浸しで途方に暮れていた。
すると、目の前に小さな看板が現れた。
「乾かし屋 1回500円」
看板の奥には、古びたプレハブのような小さな建物がぽつんと立っている。
「こんなの見たことないぞ……。」
怪しさを感じながらも、濡れた服が気持ち悪すぎて、思い切って中に入ることにした。
第二章:驚きのサービス
中に入ると、店内は妙にあたたかく、乾燥機のような音が響いていた。
カウンターには、年齢不詳の店主が立っていた。少し薄汚れたエプロンを着けており、穏やかな笑顔を浮かべている。
「お困りですか?」
「ええ、まあ……。」
事情を話すと、店主は手招きしながら言った。
「500円で全身乾かしますよ。」
財布から500円玉を渡すと、店主は奥の機械を指差した。
「では、あちらへどうぞ。」
指示された通りに立つと、突然、温かい風が全身を包み込んだ。風は心地よく、湿った服や髪が一瞬で乾いていくのがわかった。
「これで大丈夫です。」
確認すると、濡れていた服も靴も、まるで何事もなかったかのように綺麗に乾いていた。
「……なんだこれ?」
驚きつつも感謝を伝え、店を出た。振り返ると、店はまだそこにあった。
第三章:再会と違和感
それから数年後、同じようなシチュエーションで乾かし屋に出会った。川遊び中に足を滑らせ、全身びしょ濡れになったときのことだ。
「あの店だ!」
再び現れた乾かし屋は、以前と全く同じだった。建物の古びた外観、看板、そして店主の姿――時間が止まったかのように変わらない。
不思議に思いながらも、また500円を払い、乾かしてもらった。
第四章:気づいた法則
三度目に乾かし屋を訪れたのは、大雨の中で迷子になった日のことだった。そのとき、私は気づいた。
「この店、びしょ濡れにならないと現れないんだ。」
さらに奇妙なのは、店を出た後に振り返ると、数分も経たないうちに建物が消えていることだった。
第五章:乾かし屋の秘密
四度目に出会ったとき、私は思い切って店主に尋ねてみた。
「どうしていつも、びしょ濡れのときにしか現れないんですか?」
店主は少し考えた後、穏やかな笑顔で答えた。
「私たちは、必要なときにだけ現れる店なんですよ。あなたにとっても、そうでしょう?」
「私?」
「乾かし屋は、雨や水で困っている人のために存在する場所です。それだけですよ。」
その言葉に納得したような、しないような気持ちで店を後にした。そしていつも通り、数分後には店は消えていた。
第六章:また会える日を待ちながら
今でも私は乾かし屋のことを思い出す。
びしょ濡れになったらまた現れるのだろうか。それとも、もう出会うことはないのだろうか。
乾かし屋は現実のものだったのか、それとも何か別の存在だったのか――。
ただ一つ言えるのは、あの店が必要なときに必ず現れたということだ。
次に雨に降られたとき、私はもう一度あの不思議な店に会いたいと願うだろう。
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