目次
【プロローグ】
私がその占い師に出会ったのは、偶然だと思っていた――最初は。
仕事帰り、ふと立ち寄った商店街の片隅に、小さなテーブルと椅子だけを置いた簡素な占いブースがあった。
「占いなんて信じないけど…」
普段の私なら無視して通り過ぎるところだが、その日はなぜか立ち止まってしまった。疲れていたのか、少し気が緩んでいたのかもしれない。
椅子に座ると、占い師は年配の女性で、白い布を被った衣装をまとっていた。目が鋭く、見つめられると息が詰まるような感覚があった。
「あなた、何かを探していますね。」
彼女は静かにそう言った。
【奇妙な占い】
私は軽い気持ちで答えた。
「探し物なんてありませんよ。ただ、少し疲れているだけです。」
しかし、占い師は笑わずにこう続けた。
「探していないとあなたは思っている。でも、その"答え"はもうすぐ見つかるでしょう。」
そして、彼女はポケットから小さな紙切れを取り出し、私に手渡した。
紙には、奇妙な文字と図形が描かれていた。ぐるぐると渦を巻いた円、そしてその中心には「もう一度、山の上へ」と書かれている。
「山の上…?」
「心当たりがあるはずです。あなたが"そこで見つけるもの"は、今の人生を変えるでしょう。」
占い師の言葉には妙な力があり、断言されると何も言えなくなった。
【山への記憶】
家に帰ってからも、その紙切れと「山の上」という言葉が頭から離れなかった。
ふと、子供の頃に家族と一緒に登った山を思い出した。近所にある小さな山で、頂上には古い祠があり、子供の頃は怖くて近づけなかった場所だ。
「…もしかして、あの山のこと?」
次の休日、私は妙な胸騒ぎを感じながら、その山へ向かうことにした。
【不思議な出会い】
久しぶりに訪れた山は、記憶の中よりも鬱蒼としていた。道は細く、足元には枯葉が積もっている。誰も訪れないのか、山道には人気がなかった。
頂上に辿り着くと、そこには昔のままの古い祠が残っていた。
「やっぱり何もないよな…」
そう思いながら祠に近づくと、地面に小さな光るものが落ちているのに気づいた。
それは、金色に輝く小さな鈴だった。鈴を拾い上げると、どこからか涼やかな風が吹き、耳元で小さな声がした。
「おかえり。」
「え?」
周りを見渡しても誰もいない。しかし、不思議なことに心の中にぽっと温かいものが灯るような感覚があった。
【帰り道の変化】
山を下りる途中、何かが変わったことに気づいた。
今まで目に入ってこなかった景色が、急に鮮やかに感じられる。木々の緑、鳥のさえずり、土の匂い――すべてがやけにリアルで、美しく見えたのだ。
そして、自分の心の中に長年引っかかっていた"何か"がすっと軽くなった気がした。
「あの鈴と、あの言葉のせいだろうか…?」
【エピローグ】
家に帰り、占い師にもらった紙切れを見返すと、不思議なことに文字が消えていた。
ただ、あの日を境に私の人生は少しずつ変わった。仕事の疲れや人間関係のストレスが気にならなくなり、心が軽くなったのだ。
「"探していたもの"は、これだったのかもしれないな…」
あの占い師にはもう二度と会えなかったが、時々思うことがある。
人生の中でふと現れる不思議な出来事は、スピリチュアルな何かが働いているのかもしれない――私たちが気づいていないだけで。
もし、あなたがどこかで奇妙な占い師に出会い、不思議な言葉をかけられたなら、それは人生の「答え」を探す旅の始まりかもしれません。
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