目次
【プロローグ】
それは、まったく普通の一日だった。
会社からの帰り道、駅前のフリーマーケットにふと足を止めた。特に目的があったわけではない。ただ、少し古びたテーブルに並んだガラクタの中に、何か引き寄せられるものを感じた。
「これ、何だろう…?」
私はそこで、小さな古びた鍵を見つけた。金色に鈍く輝くその鍵は、装飾が細かく、まるでアンティークのようだった。
店の主人は、私の問いに笑いながら言った。
「それはただの飾りだよ。でも、君が気に入ったなら持っていきな。」
値段はたったの500円。興味本位で、その鍵を買った。
【鍵の力】
その日から、不思議なことが起こり始めた。
鍵を手に取って考えごとをすると、なぜか答えが自然と頭に浮かぶのだ。
例えば、会社での資料作りに悩んでいた時――
「どうすればいいんだ…」と鍵を握ると、ふとアイデアがひらめいた。
さらに、探し物をしている時もそうだ。
「鍵よ、あの本はどこにあるんだろう?」とつぶやけば、なぜか本棚の特定の場所が気になり、そこに見つけることができた。
最初は偶然だと思ったが、何度も繰り返すうちに、私は確信した。
この鍵には不思議な力がある――。
【鍵をする日々】
それから私は、鍵を肌身離さず持ち歩くようになった。
小さな布袋に入れて胸ポケットにしまい、寝る時も枕元に置いた。大事な仕事の前や、不安なことがある時には鍵を握りしめる。
すると、不思議と心が落ち着き、物事がうまく運ぶのだ。
「この鍵は、俺のラッキーアイテムだな。」
私は鍵に対して、感謝の念すら抱くようになった。
【奇妙な出来事】
しかし、ある日を境に少しずつ奇妙なことが起き始めた。
鍵を握ると、今までのように答えやひらめきが浮かぶのではなく、頭の中にぼんやりとした映像が浮かぶようになったのだ。
それは知らない場所や、見たことのない人の姿――どこか遠くの風景のように見えた。
「何だ、これ…?」
不安に駆られつつも、鍵を手放すことが怖くなっていた。
【鍵の消失】
その日、仕事で大切なプレゼンを控えていた私は、いつものように鍵をポケットに忍ばせていた。
だが、オフィスに到着してポケットを探ると――鍵がない。
「えっ…嘘だろ?」
慌ててカバンや上着、机の周りを探したが、鍵はどこにもなかった。
「まさか、道中で落としたのか?」
焦りとともに、頭の中が真っ白になった。あの鍵がないと、うまくいかない気がしてならなかったのだ。
【鍵のない生活】
その日、プレゼンは何とか乗り切ったが、鍵を失くしたショックは大きかった。
「これからどうすればいいんだ…」
しかし、数日経つと気づいたことがあった。
不思議なことに、鍵がなくても私は日々の問題を自分自身で解決していた。考えれば答えが出て、行動すれば物事は前に進んでいく。
「あの鍵がなくても、俺はやれるんだな…。」
少し寂しさもあったが、同時に肩の力が抜けるような気がした。
【エピローグ】
それから何週間か経ったある日、駅前の同じフリーマーケットを通りかかった。
あの鍵がもう一度出てこないかと、つい探してしまう自分がいた。だが、あの店も主人も、もうそこにはいなかった。
「やっぱり、あれは特別なものだったのかな…」
私はそう呟きながらも、鍵に頼らず過ごす自分に、少しだけ自信を持てるようになっていた。
もしかすると、あの鍵は私に"自分で進む力"を思い出させるために現れたのかもしれない――。
もしあなたが、不思議な力を持つアイテムを手に入れたら、それはきっと「あなたの力を試すためのもの」かもしれません。
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