目次
【プロローグ】
それは何気ない夜の出来事だった。
私は仕事の疲れから早めに寝室へ入り、スマホをいじりながらぼんやりと過ごしていた。ふとした拍子に、枕元の棚に置いてある写真立てが目に入る。
その写真立てには、数年前に亡くなった祖母の笑顔の写真が収められていた。幼い頃、私は祖母にとても可愛がられていて、彼女の笑顔は私の心の中に今でも鮮明に残っている。
「おばあちゃん、…」
そんなことを考えていると、カタンッ――と、突然写真立てが倒れた。
「えっ…?」
風もないし、地震があったわけでもない。ただ、静まり返った部屋で写真立てが倒れた音だけが響いた。
【不思議な現象】
写真立てを元に戻しながら、「偶然だろう」と自分に言い聞かせた。しかし、それからというもの、妙なことが続くようになった。
その日から、写真立てが毎晩倒れるようになったのだ。
1日目は夜中、2日目は寝る直前、3日目には仕事から帰って部屋に入った瞬間――何もしていないのに、必ず倒れている。
「…なんだ、これ?」
気味が悪くなり、写真立てを別の場所に移動させてみた。けれど、別の場所に置いても、同じように倒れる。
【祖母の写真】
その写真は、祖母が亡くなった年に撮ったものだった。手元に残っていた数少ない遺品のひとつで、祖母が大好きだった笑顔の1枚だ。
ある夜、写真立てが倒れるのを見た私は思い切って声をかけてみた。
「おばあちゃん…? 何か伝えたいことがあるの?」
もちろん返事なんて返ってこない。ただの写真だ。だが、その瞬間、部屋の隅からふわっと優しい香りが漂ってきた。
それは、祖母がいつも使っていた白檀のお香の香りだった。
【古いアルバム】
次の日、ふと気になって押し入れの奥にしまってあった古いアルバムを取り出してみた。
祖母との写真が何枚も収められている中、1枚だけ、見たことのない写真が挟まっていた。
それは古いモノクロ写真で、若い頃の祖母が見知らぬ場所で笑っているものだった。後ろには、古びた洋館が写っている。
「おばあちゃん、こんな写真…知らないな。」
裏面には、薄く文字が書かれていた。
「また、ここで会おうね。」
私は鳥肌が立った。祖母の筆跡にそっくりだったからだ。
【夢の中の導き】
その夜、祖母が夢に出てきた。夢の中で、祖母はあの洋館の前に立ち、私を呼んでいた。
「来てくれてありがとう。でもね、心配しないで。あなたはあなたの道を進みなさい。」
祖母の笑顔は穏やかで、どこか安心感に満ちていた。
目を覚ました時、涙が頬を伝っていた。そして枕元を見ると、例の写真立てが倒れていた。
しかし、それを手に取ると、なぜか温かい気配を感じた。
【静かな日常へ】
それからは、不思議と写真立てが倒れることはなくなった。
「何だったんだろうな…」
あれは祖母が何かを伝えようとしていたのか、それともただ私が祖母を思い出すきっかけだったのか。
今でも分からないが、あの時以来、写真立てを見るたびに私は笑顔で手を合わせるようになった。
「おばあちゃん、ありがとう。」
祖母の写真は静かに、けれど確かに、私を見守っているような気がする。
エピローグ
もしあなたの大切な写真立てが何度も倒れることがあれば、それは"何か"を伝えようとしているのかもしれません。
それが偶然だとしても、その瞬間、あなたが大切な誰かを思い出せるなら――それこそが、不思議な奇跡なのかもしれません。
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