私は毎朝、同じ時間に同じ電車に乗って通勤している、ごく普通の会社員です。都会の喧騒に包まれながら、ぼんやりとスマホを眺める日々。しかし、ある朝、私は不思議な体験をしました。それは、今でも夢だったのか現実だったのか、はっきりしないまま心に残っています。
目次
いつもと違う通勤の朝
その日は少し寝坊してしまい、いつも乗る電車の1本後に乗ることになりました。いつもとは違う混雑具合に戸惑いながら、何とか車内に滑り込むと、空いている座席を見つけて座りました。
席に座ると、ふと目の前の窓ガラスに映る自分の姿が目に入りました。少しぼんやりとした映り込みですが、「寝癖がついていないかな」と確認しようとじっと見つめました。しかし、その映り込みが何かおかしいことに気づいたのです。
ガラスに映る“私”の目が、ほんの一瞬ですが、じっと私を見返していたのです。鏡や窓ガラスに映った自分の姿と目が合うはずはありません。それなのに、その瞬間、私は心臓が凍りつくような感覚を覚えました。
不思議な乗客
怖さを紛らわそうと視線を逸らし、車内を見渡しました。そのとき、隣の席に座るスーツ姿の男性が目に入りました。どこにでもいそうな普通のサラリーマン。しかし、彼のスマホ画面にちらりと目をやると、そこには見覚えのある風景が映っていました。
その画面には、私の住むマンションのエントランスが映し出されていたのです。ぞっとして男性を見上げましたが、彼は私に気づく様子もなく、淡々と画面をスクロールしていました。
「偶然だろう」と自分に言い聞かせながらも、私はスマホを握りしめて彼の動きを気にせずにはいられませんでした。
駅のホームでの奇妙な出来事
次の駅に到着し、私は少し動揺していたので途中下車することにしました。ホームに降り立ち、深呼吸をして気を落ち着けようとしたそのとき、背後から誰かに名前を呼ばれたのです。
「○○さん。」
振り返ると、そこに立っていたのは…私自身でした。
全く同じ服装、同じ表情、同じ身長の「私」が立っていたのです。その「私」は何事もないかのように私を見つめ、穏やかな声でこう言いました。
「最近、調子どう?」
私は言葉を失いました。目の前にいる「自分」は、私と同じ顔をしていながら、どこか穏やかな雰囲気を漂わせていました。
「…誰?」と絞り出すように尋ねると、その「私」は微笑みました。
「僕は“もう一人の君”。君が忘れている記憶の中にいる存在だよ。」
失われた記憶
「君が毎日見ている空や電車の窓、自分が写るガラス…それらが全て繋がっていることに気づいてる?本当の君は、ずっと違う世界を見ているんだよ。」
その言葉を聞いているうちに、私の頭の中に幼い頃の記憶が蘇りました。それは、誰にも話したことのない、毎晩見ていた奇妙な夢――何度も同じ場所を歩き続ける夢の記憶です。
「君が忘れた役割を思い出したら、また会いに来るよ。」
そう言うと「もう一人の私」は、私が目を瞬きした瞬間に消えていました。
日常に戻って
その後、私は再び電車に乗り、会社へ向かいました。何事もなかったかのように過ぎる日常。しかし、それ以来、私は電車の窓ガラスやホームの人混みを見るたび、ふと「もう一人の自分」に目を向けてしまいます。
あの時の出来事が何だったのか、答えはわかりません。でも、あの「もう一人の私」の言葉がずっと耳に残っています。
「君が忘れた役割を思い出したら、また会いに来るよ。」
もしかしたら、私たちの中には誰もが“もう一人の自分”がいるのかもしれません。そして、日常の中に隠れたメッセージが、私たちを導こうとしているのかもしれません。
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