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通勤電車で起きた「奇妙な空席」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

日常の通勤時間は、何の変哲もない時間だと思っていた。満員電車、見慣れた景色、そして同じ時間に流れるアナウンス。

だが、あの日、私はその「日常」の中に奇妙なものを見つけてしまった――。

第一章:不自然な空席

私は毎朝、決まった電車に乗って通勤している。朝のラッシュ時、いつものように混雑する車内へ乗り込むと、奇妙なものに気づいた。

「……なんでここだけ空いてるんだ?」

私の目の前には、ぽつんと空いた一つの座席があった。周囲の乗客はぎゅうぎゅう詰めなのに、そこだけが不自然に空いている。

「ラッキー。」

そう思った私は、その席に座ろうと足を踏み出した。しかし、周りの乗客の目線が一斉に私に向けられたような気がして、なんとなく気まずくなり、結局立ったままにした。

第二章:見えない「何か」

次の日も、その空席はあった。

車内は相変わらず混んでいるのに、そこだけは誰も座らない。試しに、近くに立っている人に声をかけてみた。

「あの、座らないんですか?」

声をかけられた中年の男性は、顔色を変え、目を逸らしながら言った。

「……いや、いいんだ。君もやめときな。」

その返事に、何とも言えない不気味さが広がった。何かがおかしい。だが、それが何なのかは分からなかった。

第三章:視線の先

それから数日間、私はその席を避けながら通勤していた。空席は相変わらずで、誰も座ることはない。

しかし、ふと気づいたことがある。立っている乗客たちが、なぜかその席をじっと見つめているのだ。まるで「何か」が座っているのを見ているかのように。

怖くなり、私は電車の窓に目を向けた。そして、窓ガラスに映ったその席を見た瞬間、血の気が引いた。

「……え?」

窓ガラスには、誰も座っていないはずの席に、うっすらと「人影」が映っていた。

第四章:すれ違う存在

翌朝、私は恐る恐るその電車に乗り込んだ。混雑した車内、そして例の空席。

今度こそ確かめようと思い、勇気を出してその席に近づいた。すると、背後から誰かの小さな声が聞こえた。

「そこ、見えるの?」

振り返ると、制服姿の女子高生が立っていた。

「何が?」と尋ねると、彼女は小声で言った。

「あの席……ずっと誰かが座ってるの。みんな見えないふりしてるだけ。」

その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りついた。

第五章:席に座る「誰か」

その日を境に、私はその席を徹底的に避けるようになった。

ただ、他の乗客の視線は相変わらずその空席に向けられたままだ。時折、まるでそこに誰かがいるかのように、視線を落とし、何かに怯えた顔をする人もいた。

何が座っているのか、何が起きているのか――知りたくない気持ちと、確かめたい気持ちがせめぎ合った。

しかし、その「見えない何か」が、私に危害を加えることはなかった。ただそこにいるだけ。ただ座っているだけなのだ。

第六章:いつもの日常へ

ある日、いつものように電車に乗り込むと、その「空席」が突然埋まっているのに気づいた。

「あれ……?」

誰かが座っている――普通のサラリーマン風の男性だ。しかし、周囲の乗客たちは、なぜか彼を見ては目を逸らし、次の駅で一斉に降りていった。

その日以来、あの空席はもう空くことはなくなった。

「あれは何だったんだろう……。」

今でも時々思い出す。あの不自然な空席と、窓に映った「何か」の影を。

あれはただの偶然だったのか、それとも――。

結末

それから私は、電車に乗るたびに「空いている座席」に目を向ける癖がついた。

誰も座っていない席があると、どうしても気になってしまうのだ。

そして今朝、また見つけてしまった。

満員電車の中、ぽつんと空いた一つの席を――。



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