目次
【プロローグ】
私がその奇妙な体験をしたのは、高校3年生の夏のことだ。
当時、私は毎朝決まった電車で学校に通っていた。特に特別なことはない、いつもの通学路。電車を乗り継ぎ、駅から学校まで歩く15分の道のり。
だが、その日は何かが違った。
【違和感】
いつもと同じ時間に家を出て、同じ電車に乗ったはずだった。
車内は満員で、吊革につかまりながらうつむいていた私の目に、不意に妙なものが映った。向かいの座席に、ひどく古びた学校の制服を着た少年が座っていたのだ。
「…変わった服だな。」
その制服は、白いシャツに襟が細いネクタイ。今では見かけないようなデザインで、まるで昭和時代の学生服のようだった。
少年は窓の外をじっと見つめていた。電車がガタンと揺れるたび、体をふらつかせながらも、全く表情を変えない。
【少年との出会い】
私がその少年を気にしていると、ふと目が合った。
「君も学校かい?」
唐突に声をかけられた私は、思わず頷いた。
「そっか。でも、この電車で学校に行くのは君くらいだよ。」
少年の言葉に違和感を覚えた。
「いや、普通に通学してるけど…どういう意味?」
だが、彼はそれ以上何も言わず、次の駅で立ち上がると、私の肩を軽く叩いて電車を降りていった。
【不思議な風景】
電車を降りた後、私も学校に向かって歩き出した。
だが、通い慣れた道に違和感を感じた。街並みがどこか古臭く、見慣れない建物が立ち並んでいる。
「こんな場所、あったか…?」
歩き続けるうちに、道端に並ぶポスターや看板に気づいた。どれも見覚えのない文字やデザインで、昭和レトロな雰囲気が漂っていた。
まるで時代が数十年前に巻き戻ったかのような光景だった。
【不思議な気配】
道中、すれ違う人々は皆、どこか優しげな笑顔を浮かべていた。
「おはよう。」
「今日もいい天気だね。」
知らない人たちが次々と挨拶をしてくれる。不思議なことに、彼らの声を聞くたびに心が安らぐような感覚があった。
だが、同時に奇妙な違和感も拭えなかった。この場所がどこか「現実ではない」気がしてならなかったのだ。
【気づき】
学校に着いた私は、さらに驚いた。校舎は古びているが妙に懐かしい雰囲気があり、廊下を歩く生徒たちは皆、古い制服を着ていた。
「これ、本当に俺の学校か…?」
違和感に耐え切れず、校舎を出ようとしたその時、朝の電車で会った少年が再び現れた。
「ここがどこか、気づいた?」
少年は微笑みながら言った。
【少年の言葉】
「君が見ているのは、少しだけ違う世界だ。ここは、君が日々の忙しさで見失った大切なものが残っている場所。」
「大切なもの…?」
少年は頷き、静かに続けた。
「たとえば、空を見上げる余裕とか、知らない人に挨拶する喜びとか。君が昔、当たり前に感じていたものたちだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、心がざわつくような感覚が広がった。いつの間にか、私は日々の忙しさに追われ、本当に大切なものを見失っていたのかもしれない。
【現実への帰還】
気がつくと、私は学校の門前に立っていた。見慣れた校舎、通い慣れた道――いつもの風景が広がっていた。
だが、その日から私は、通学中に何気なく空を見上げるようになった。そしてすれ違う人々に軽く会釈するようになった。
「君が見失ったものが、少しでも戻ってくればいいね。」
あの少年の言葉が、今でも心に響いている。
【エピローグ】
それからというもの、私は忙しい日々の中でも、ふと立ち止まって周りを見渡す時間を大切にしている。
もしかすると、あの少年は「私が本当に必要なもの」を教えてくれる存在だったのかもしれない。
もし、通学中や通勤中にふと感じる違和感があれば、それはあなたの心が何かを気づかせようとしているサインなのかもしれません。
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