目次
写真立てが倒れる夜
それは、平凡な夜の出来事だった。
仕事を終え、自宅で一息ついている時、リビングの棚に飾っていた写真立てが突然倒れた。
「え、地震でもあったのか?」
そんな気配もなく、部屋の中は静まり返っている。
倒れた写真立てを手に取ると、中には大学時代の仲間たちと撮った集合写真が入っていた。卒業旅行で行ったキャンプ場で撮影したもので、笑顔の友人たちがぎゅっと肩を寄せ合って写っている。
「まあ、偶然だろう。」
写真立てを元に戻し、気にせずにその日は就寝した。
写真の“色あせ”
翌日、何気なく写真立てを見た時、違和感を覚えた。
「あれ?なんか……薄くなってる?」
写真の中で、一人だけ色が薄くなっているのだ。それは大学時代の友人、ケンジだった。
「まさか湿気で劣化したのか?」
そう思い直して気にしないようにしたが、どうにも引っかかる。その日は何度も写真を見返してしまった。
不安が募る
それから数日後、写真を確認すると、ケンジの姿はさらに色あせていた。他の友人たちは鮮明なままなのに、ケンジだけがほとんどモノクロのようになりつつある。
「……何かあるのか?」
胸騒ぎがして、思い切ってケンジに電話をかけた。
「ケンジ、最近どう?体調とか悪くない?」
突然の質問にケンジは笑いながら答えた。
「別に変わったことはないよ。どうした、急に?」
「いや、なんか嫌な予感がするんだ。気を付けてくれよ。」
「なんだよそれ!お前占い師にでもなったのか?」
ケンジは軽く流して笑っていたが、私の中の不安は消えなかった。
鬼気迫る二度目の電話
その後も写真を確認するたび、ケンジの姿はさらに色あせていった。
「これは偶然じゃない。」
再びケンジに電話をかけた。
「頼む!一度でいいから病院に行って、検査を受けてくれ!」
「おいおい、本気なのか?」
電話越しのケンジに向かって、私は必死に訴えた。
「俺も説明できないけど、絶対に何かが起こる前兆なんだ。お願いだから信じてくれ!」
私の異常な熱意に押されてか、ケンジはしぶしぶ承諾してくれた。
見つかった病気
数日後、ケンジから連絡が来た。
「お前の言う通り、人間ドックを受けたよ。正直、半分バカにしてたんだけど……」
言葉のトーンが変わった。
「なんと……胃の初期ガンが見つかった。早期発見だから手術で完全に治るらしい。」
私は驚くと同時に、奇妙な写真の現象が頭に浮かんだ。
「お前が言ってくれなかったら気づかなかったかもしれない。ありがとう、本当に感謝してる。」
写真が元に戻る
ケンジの手術は無事成功し、彼は健康を取り戻した。
そして、あの写真を再び確認すると、奇妙なことが起きていた。色あせていたケンジの姿が元通り鮮やかに戻っていたのだ。
「これも偶然なのか?」
私は深く考えるのをやめた。ただ、写真立てが倒れたあの日から始まった一連の出来事が、ケンジの命を救ったのは間違いない。
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