目次
【プロローグ】
私がそのノートを手に入れたのは、中古の文房具店だった。
雑貨屋の片隅に、埃をかぶったノートが積まれていた。どれもありふれたものばかりだったが、その中にひときわ異彩を放つノートがあった。
表紙は黒い布地に覆われており、金色の細かな刺繍が施されている。手に取ると、不思議な温かさが伝わってきた。
値札には「100円」とだけ書かれていた。
何気なく買い求め、家に帰った私は、その夜から人生を変えるような体験をすることになる。
【ノートの力に気づく】
その夜、私はいつも通り布団に入った。夢の中で、見知らぬ街を歩いていると、不思議な風景に出くわした。
石畳の道沿いに並ぶ屋台には、見たこともない色とりどりの果物や工芸品が並んでいる。そこに飾られていた小さなガラスの球に、私は目を奪われた。
翌朝、目を覚ました私は、昨晩買ったノートを机の上に置き、夢で見たガラスの球を何気なく書き記した。
すると――次の瞬間、机の上にそのガラスの球が実際に現れたのだ。
「これ…夢で見たやつだ。」
信じられない思いで手に取ると、確かに夢の中で見た通りの美しさだった。
【夢の中の再会】
ノートの力を知った私は、次第に夢の中で過ごす時間を楽しみにするようになった。
ある夜、夢の中で懐かしい人物に出会った。それは、幼い頃に亡くなった兄だった。
「お前、元気そうだな。」
兄は笑顔で言った。現実ではもう会えないはずの人だったが、夢の中では自然に会話ができた。
「ここに来たのか。久しぶりだな。」
夢の中の兄との再会は、私にとって何よりもかけがえのない瞬間だった。目が覚めた後も、その余韻が心に残った。
私はノートを手に取り、「兄と再会したい」と書き込んだ。次の夜、また夢の中で兄と会うことができたのだ。
【夢と現実の境界】
ノートは、私の生活を一変させた。
夢の中で見つけた美しい花や、奇妙な置物をノートに書き込むと、現実にそれらを持ち帰ることができた。
さらに夢の中で知り合った人々とも交流を深めた。彼らは現実では存在しないはずの人々だったが、夢の中では親しい友人のようだった。
ある日、夢の中で美しい金の時計を見つけ、それをノートに書き記した。翌朝、現実にその時計が現れていた。
「この力、どこまで使えるんだろう…？」
【ノートの代償】
しかし、次第に夢と現実の境目が曖昧になり始めた。
夢で兄と過ごした夜、現実でも兄の声が聞こえるようになった。
「戻ってこいよ。こっちは楽しいぞ。」
その言葉に引き込まれるような感覚がした。夢の中が現実よりも居心地よくなり、私は次第に現実の生活をおろそかにするようになった。
ある日、夢の中で兄がこう言った。
「そのノート、使いすぎるなよ。」
兄の言葉が意味するものが何なのか分からなかったが、違和感が胸に残った。
【ノートの消失】
ある夜、私は夢の中で奇妙な風景に出くわした。広大な砂漠の真ん中に、私が毎晩使っていたノートがポツンと置かれていた。
ノートを拾おうと近づくと、それは急に強い光を放ち、私の手の中でパラパラと崩れていった。
「どうして…！」
叫びながら目を覚ました私は、現実でもノートを探した。しかし、机の上に置いてあったはずのノートはどこにもなかった。
【エピローグ】
それ以来、私はもう夢から何かを持ち帰ることはできなくなった。
しかし、兄との再会や、夢の中で見つけた美しい風景の記憶は、心の中に鮮明に残っている。
あのノートは私に「夢と現実の違い」を教えてくれるために現れたのかもしれない――そんな気がしている。
もしあなたが、不思議な力を持つノートを手に入れたら、夢と現実の境界を大切にしてください。それは、二度と取り戻せないものかもしれません。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
1冊115円のDMMコミックレンタル！
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
人気コミック絶賛発売中！【DMMブックス】
ロリポップ！
ムームーサーバー
新作続々追加！オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
 | 新品価格 |
 |
 | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |
