怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

時間を巻き戻せるペンを手に入れた話 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

ある日の帰り道、私は小さな骨董品屋の前で足を止めた。普段は気にも留めない店だが、その日は何かに引き寄せられるように店内へ入った。

埃っぽい空気の中、目に止まったのは、ショーケースの隅にひっそりと置かれた金属製のペンだった。

「気になるのかい?」

突然、店主が声をかけてきた。年配の男性で、どこか不思議な雰囲気を持っている。

「このペン、何か特別なんですか?」

「このペンはね、一度だけ書いた内容を"巻き戻せる"力を持っているんだよ。」

その説明に半信半疑ながらも、私はそのペンを購入した。価格は驚くほど安かった。

【不思議な力に気づく】

そのペンを手に入れてから数日後、私は試しに日記に「今日は雨が降った」と書いてみた。そしてペンのクリップを反対方向にひねった瞬間、日記のページが空白に戻った。

「本当に戻った…?」

試しにまた書いてひねると、再び文字が消える。さらに驚いたのは、巻き戻しの瞬間、わずかに周囲の時間が戻った感覚があったことだ。

【日常での活用】

このペンの力は、日々の生活にささやかな便利さをもたらしてくれた。

たとえば、会議でミスを指摘された時――
「さっきの発言、なかったことにしたい…」と心で思いながらペンをひねると、その発言の直前に戻ることができた。

また、電車で寝過ごした時もこのペンが役立った。時間を少しだけ巻き戻し、降りる駅でしっかり目を覚ますことができた。

「このペン、最高だな…!」

私はペンを大切に扱い、日々のちょっとした後悔を帳消しにするために活用していた。

【ペンの限界】

しかし、このペンには限界があった。巻き戻せるのはわずか数分程度で、それ以上の時間を遡ることはできなかったのだ。

さらに、何度も使ううちにペン自体が熱を持ち、動作が不安定になることがあった。

「使いすぎには注意した方がいい…」

そう思いながらも、私はペンを手放すことができなかった。

【決定的な出来事】

ある日、私は重要なプレゼンの場で大きなミスを犯してしまった。緊張のあまりスライドを間違えて送り、説明も支離滅裂になってしまったのだ。

「こんな失敗、なかったことにしたい…!」

私はすぐにポケットからペンを取り出し、クリップをひねった。

時間が巻き戻され、ミスをする前の状態に戻る。プレゼンをやり直すことができた私は、無事に成功を収めた。

だが、その直後、ペンから「ピシッ」という不穏な音がした。

【ペンの喪失】

家に帰り、ペンを確認すると、金属部分に細かい亀裂が入っていた。

「まさか壊れた…?」

不安になり、もう一度試そうとペンをひねった瞬間、ペンはポキリと音を立てて完全に折れてしまった。

その瞬間、不思議な感覚に襲われた。ペンが持つ「時間を巻き戻す力」が私の体からスッと抜けていくようだった。

【その後の気づき】

ペンを失った私は、もう二度と時間を巻き戻せない生活に戻った。しかし、ふと気づいたことがある。

ペンに頼らずとも、失敗や後悔を前向きに捉えることで、次の行動を改善することができるのだと。

「あのペンが教えてくれたのは、時間を戻す力じゃなくて、未来を変えるための姿勢だったのかもしれないな。」

そう思いながら、私はこれからも進んでいく。

【エピローグ】

ペンはもう手元にない。だが、あの不思議なアイテムが与えてくれた経験は、私の心に深く刻まれている。

もし、あなたが不思議なアイテムを手に入れたら――それは、あなた自身を変えるための「きっかけ」なのかもしれません。



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