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願いを叶える指輪の代償 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

ある日、仕事帰りに立ち寄った古びたリサイクルショップで、それを見つけた。

ガラスケースの中に置かれていたのは、ひとつの指輪。シンプルな銀のリングだったが、小さな赤い宝石が不思議な輝きを放っていた。

「それ、欲しいのかい?」

店主の声に振り返ると、年配の女性が微笑んでいた。

「いえ、ただ綺麗だなと思って…」

「この指輪はただの装飾品じゃない。願いを一つだけ叶えてくれる指輪さ。ただし、代わりに"何か"を失うことになるけどね。」

冗談だろうと思いながらも、私はその指輪を買った。妙に惹かれるものがあったのだ。値段は驚くほど安かった。

【指輪の力】

家に帰り、その指輪を改めて眺めてみた。指にはめると、自分の体温が指輪に伝わり、赤い宝石がわずかに輝きを増した。

「願いを叶えるなんて、本当かな…?」

軽い気持ちで呟いた私は、その夜、初めて指輪の力を実感することになる。

【最初の試み】

翌朝、指輪を眺めながら試しに小さな願いを口にした。
「今日は仕事がスムーズに終わりますように。」

すると、いつもならトラブル続きの仕事が、その日に限って驚くほど順調に進んだ。顧客の対応もスムーズで、上司からも褒められるほどだった。

「…まさか、これ本当に?」

指輪の力に気づいた私は、それ以来さらに慎重に扱うようになった。願いを口にするのが怖くなったのだ。

【本当に叶えたい願い】

数日後、ある出来事が起きた。

私には大切な友人がいた。幼なじみの由紀で、最近、彼女が難病にかかっていると聞かされた。治療法が見つかっていない病気で、日々体力が衰えているという。

指輪を見つめながら、私は葛藤した。

「由紀の病気を治すことを願うべきだろうか…?」

だが、店主の言葉が頭をよぎった。「願いを叶えれば、何かを失う。」

それが何なのかは分からない。それでも、由紀を救いたい気持ちは抑えられなかった。

【願いと代償】

私は指輪を握り締め、静かに言葉を口にした。
「由紀の病気を治してください。」

その瞬間、指輪が赤く強く輝き、熱を帯びたかと思うと、砕け散った。

驚いて手を見ると、指輪は完全に跡形もなくなっていた。

【変化】

次の日、由紀から電話がかかってきた。

「聞いて!今日病院で検査したら、病気が消えてたって!」

彼女の声は明るく、元気そのものだった。私は指輪の力が本物だったと確信した。

しかし、その日から私自身に奇妙な違和感が生じ始めた。

【失ったもの】

まず気づいたのは記憶だった。最近の出来事が曖昧になり、次第に過去の記憶が薄れていく感覚に襲われた。

友人との思い出や、学生時代の記憶がぽっかりと抜け落ちていることに気づいた時、すべてを理解した。

「これが代償なのか…」

指輪は私の記憶を代わりに奪ったのだ。

【エピローグ】

その後、由紀は完全に健康を取り戻し、私に何度も感謝してくれた。だが、彼女との思い出も徐々に薄れていき、ついには彼女のことを思い出すのに苦労するようになった。

指輪の力で救われた命は確かにあった。しかし、それを代償に私は自分の一部を失った。

願いを叶える力――それは決して無償ではない。もしあなたがその力を手にした時、何を願い、何を失う覚悟があるのか、考えてみてほしい。



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