これは、数年前に私が経験した奇妙で恐ろしい出来事です。
当時、私は郊外の古い一軒家に引っ越したばかりでした。家の庭は広く、手入れが行き届いておらず雑草が生い茂っていました。引っ越しを機に家庭菜園でも始めようと思い、まずは庭を整えることにしました。
目次
最初の異変
ある晴れた日のこと。雑草を抜き終えた私は、スコップを手に穴を掘り始めました。小さな菜園を作るために、深さ30センチほど掘ろうとしていたのです。
しばらく掘り進めると、スコップが硬いものに当たる感触がありました。「石かな?」と思い、力を込めて掘り続けると、その硬いものが見えてきました。
それは石ではなく、錆びた鉄板のようなものでした。奇妙に思いながらも掘り続けていくと、その鉄板がやけに大きいことが分かりました。四方を掘っても終わりが見えず、やがてそれが広大な面積を持つ何かだということに気づきました。
鉄板の下から聞こえる音
その鉄板に触れた瞬間、微かな音が聞こえました。それは、人がささやいているような声でした。
「……ここ……おいで……」
あまりにも小さく、風の音か空耳だと思いましたが、その場を離れても耳から離れませんでした。不安になりながらも、その日は作業を中断し、家に戻りました。
しかし、その夜。ベッドに入ると再びその声が聞こえてきたのです。
「……もっと掘って……」
目を覚ますと、部屋は静まり返っていました。気味が悪かったのですが、好奇心が勝り、翌朝再び穴掘りを再開することにしました。
穴の奥に現れたもの
翌日、さらに鉄板の周りを掘り進めると、その中央に小さな取っ手のようなものがついていることに気づきました。どうやら鉄板は、地下に続く扉のようでした。
「まさか、地下室でもあるのか?」
そう思いながら取っ手を引っ張ると、鈍い音を立てて鉄板が開きました。その下には、暗闇が広がる深い穴がありました。穴の中には梯子がかかっており、どうやら中に入れるようです。
中を覗き込んだ瞬間、冷たい風と共に、はっきりとした声が聞こえました。
「……降りてきて……」
私は背筋が凍りました。それでも、何かに引き寄せられるように梯子を掴み、暗闇の中に足を踏み入れました。
地下で見たもの
梯子を降り切ると、そこには驚くほど広い空間が広がっていました。まるで長い間誰にも使われていない倉庫のような場所で、湿気た空気が漂っています。
空間の中央には、古びた木の机と椅子がぽつんと置かれていました。その上には、何かが記されている紙の束がありました。
恐る恐る紙を手に取ると、それは私の名前が書かれた日記のようなものでした。
「今日、庭に穴を掘り始めた。」
「鉄板を見つけた。」
「声が聞こえる。」
書かれていた内容は、私がここ数日体験したことと全く同じだったのです。
「これは何なんだ…?」
頭が混乱する中、背後で微かな足音が聞こえました。振り返ると、暗闇の奥に何かが動いている気配がしました。
突然の崩壊
恐怖に駆られた私は、梯子を登って地上に戻ろうとしました。その瞬間、地下室の空間が激しく揺れ始め、まるで地震が起きたかのように土が崩れ落ちてきました。
「早く出なきゃ!」
梯子を必死で登り、何とか地上に出ると、後ろで大きな音がして穴が完全に埋まってしまいました。崩れた土で鉄板も埋まり、地下室への入り口は完全に消えてしまいました。
その後の奇妙な出来事
それ以来、穴があった痕跡は一切なく、まるで最初から何もなかったかのようです。
ただ、時々あの声が耳に蘇ります。
「……もっと掘って……」
あれは一体何だったのか、未だに分かりません。好奇心で穴を掘ることがどれほど危険なことか、あの出来事が教えてくれたような気がします。
もし、あなたの庭に何かを掘る機会があったら――その奥に何が隠されているのか、少しだけ注意した方がいいかもしれません。
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