目次
【プロローグ】
私は3歳の息子を育てる母親だ。
ある日、休日に息子を連れて近所の本屋を訪れた。絵本好きの息子のために、新しい本を買ってあげようと思ったのだ。
「好きなのを選んでいいよ。」
そう言うと、息子は嬉しそうに絵本コーナーへ駆けていった。
【奇妙な絵本】
息子が持ってきたのは、見たこともない絵本だった。
表紙にはタイトルがなく、ただ真っ白な背景に古びた木の絵が描かれている。開いてみると、挿絵はモノクロで、文章もどこか不気味な雰囲気を醸し出していた。
「これがいいの?」
他にも色鮮やかで可愛らしい絵本があるのに、なぜこれを選んだのか不思議だったが、息子がどうしてもと言うので購入することにした。
レジで会計を済ませる際、店員が一瞬だけ怪訝な顔をしたように見えた。
「この本、珍しいですね。どこに置いてあったんでしょう…?」
その言葉に少し引っかかりながらも、私はその絵本を持ち帰った。
【読み聞かせ】
その夜、息子が寝る前にその絵本を読んでほしいとせがんできた。
私はページを開き、読み始めた。物語はこんな内容だった。
「ある日、小さな男の子が森の中で大きな木を見つけました。その木は男の子に『ずっとここにいて遊びましょう』と言いました。」
ページをめくると、男の子が木の根元に座り、楽しそうに笑っている絵が描かれていた。だが、その笑顔にはどこか違和感があった。
【夢の中の異変】
絵本を読み終えた夜、私は奇妙な夢を見た。
夢の中で、息子が森の中で大きな木の前に立っていた。その木は実際の絵本に描かれていたものとそっくりだった。
「ここに来たんだね。」
木から声が聞こえた気がして、私は息子を呼ぼうとした。しかし、声が出ず、体も動かなかった。
目が覚めた時、全身が冷や汗で濡れていた。時計を見ると夜中の2時。隣で眠る息子の顔を見ると、何事もなく安らかに寝ているようだった。
【絵本の異変】
翌朝、ふと絵本を開いてみると、挿絵が変わっていることに気づいた。
昨夜読んだ時には、木の下で笑う男の子だけが描かれていたはずだった。しかし、今ではその隣に息子によく似た子供の姿が描かれていたのだ。
「…気のせいだよね。」
気味が悪くなり、私はその絵本を閉じて棚にしまった。
【息子の行動】
その日から、息子の行動が少しずつ変わり始めた。
以前は明るく元気だったのに、何かに取り憑かれたように無口になり、じっと窓の外を眺める時間が増えた。
「どうしたの?何かあったの?」
問いかけても、息子はただ一言こう言うだけだった。
「木が待ってるんだ。」
【恐ろしい結末】
不安が募り、私は絵本を燃やしてしまおうと思った。庭に出て、マッチを擦り、絵本を火の中に投げ入れる。
燃え上がる炎の中で、絵本が焦げる匂いが立ち込めた。しかし、その瞬間、息子が家の中から叫び声を上げた。
「やめて!木が怒る!」
私は息子を抱きしめ、「もう大丈夫だから」と言い聞かせたが、彼は震えながら「木が来る…木が来る…」と繰り返した。
その夜、再び夢を見た。大きな木が私の家の前に立ち、窓の外から中を覗き込んでいた。
「あの本を返せ。」
低い声が聞こえた瞬間、私は飛び起きた。
【エピローグ】
その後、息子の状態は少しずつ元に戻り、夢を見ることもなくなった。しかし、本屋にあの絵本がどこに置かれていたのか尋ねても、誰もその存在を知らなかった。
もし、あなたが本屋で見たことのない絵本を見つけたら、どうか気を付けてください。それがどんな物語を語り、どんな運命を呼び寄せるのか、誰にも分からないのですから――。
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