目次
プロローグ
休日に5歳の娘と本屋へ行くのが、私たち親子の楽しみだった。
その日も娘を連れて近所の大きな本屋に出かけたのだが、そこで見つけた一冊の絵本が私たちの日常を少しだけ変えることになるとは、夢にも思わなかった。
第一章：本屋での出会い
娘は本屋が大好きだ。子供向けのコーナーに入るとすぐに走り出し、気に入った本を見つけると私のところに持ってくる。
「これ読んで！」
その日もいくつかの絵本を手に取り、私の膝の上で読むようせがんできた。どれも可愛らしい絵が描かれた普通の絵本だった。
しかし、最後に娘が選んできた本は、少し様子が違っていた。
表紙にはタイトルも著者名もなく、ただ一面に淡い虹色のグラデーションが広がっているだけ。
「それ、選んだの？」
「うん、すごく綺麗！」
確かに、不思議と目を引く表紙だった。気になって中を開くと、驚いたことに、1ページ目には娘の名前が書かれていた。
「○○ちゃんへ、このお話はあなたのために。」
第二章：不思議な内容
それ以降のページには、優しいタッチで描かれた絵が続いていた。
最初のページでは、女の子が庭で花を摘んでいる場面。その後、女の子が見知らぬ動物と遊んでいる絵、さらに森の奥で光る石を見つける絵が描かれていた。
娘は夢中でページをめくり、楽しそうに笑っていた。
「この女の子、私に似てるね！」
確かに、髪型や服装が娘とそっくりだったが、それが絵本にありがちな偶然だと思っていた。
第三章：絵本と現実の一致
その日、本屋で絵本を買い、帰宅後に娘が読み返していると、奇妙なことが起き始めた。
絵本の中で女の子が庭で見つけた花が、娘がその日の午後に庭で摘んできた花と全く同じだったのだ。
「ねえ、パパ！ 絵本に出てきたお花、見つけたよ！」
偶然だと思い込もうとしたが、次の日、近所の森にある遊歩道を歩いていると、娘が「お話みたい！」と言って、絵本に描かれていたのとそっくりな石を見つけてた。
その石は太陽の光を反射してぼんやりと光り、どこか神秘的だった。
第四章：ページが変わる
さらに不思議なことに、絵本の内容が日ごとに変わっていることに気づいた。
最初は女の子の穏やかな日常を描いていた絵本が、次第に冒険の物語になり、奇妙な出来事が増えていったのだ。
あるページには、女の子が霧の中をさまよい、不思議な塔にたどり着く場面が描かれていた。
「これ、どこかで見た気がする……。」
その絵は、近所の公園の奥にある古い展望塔にそっくりだった。
第五章：絵本の結末
そして最後のページには、こう書かれていた。
「次の扉を開けたとき、すべてが分かる。」
ページには鍵穴のついた扉が描かれていたが、それ以降のページは真っ白だった。
「これで終わり？」
娘は不満そうだったが、私はどこかほっとしていた。この絵本がこれ以上現実に関わることを恐れていたからだ。
結末：絵本の行方
その後、娘は絵本を棚にしまい、他の本と同じように扱うようになった。
しかし、ある朝、棚を整理していると、その絵本がどこにも見当たらなかった。
娘に聞いても、「知らない」と言うだけだった。
今でも、あの絵本がどこに行ったのか分からない。ただ、娘が時々「あのお話、また読みたいな」と呟くたびに、あの不思議な日々を思い出す。
あの絵本は、私たち親子に何を伝えたかったのだろうか――それは、今でも分からないままだ。
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