怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

本屋で選んだ絵本の中の声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は5歳の娘を育てる母親です。休日には娘と近所の本屋を訪れるのが恒例になっています。娘は絵本が大好きで、本屋でお気に入りの一冊を見つけると大喜びします。その日も、娘と本屋へ出かけることになりました。

本屋で見つけた一冊

いつものように子供向けの絵本コーナーを訪れると、娘は嬉しそうに本棚を物色し始めました。その間、私は近くで娘を見守りながら、自分でも面白そうな絵本を探していました。

娘が「あった!」と手に取ったのは、一見普通の絵本でした。表紙には「おともだちの森」と書かれ、かわいらしい動物たちが描かれています。

「これにする!」

娘が気に入ったならと、私はその絵本を購入しました。本屋を出て、公園で少し遊んだ後、家に帰ると、娘は「早く読んで!」とせがみました。

不思議な絵本

夜、寝る前にその絵本を開きました。中身は予想通り、動物たちが森で繰り広げる冒険物語で、何の変哲もないように思えました。

しかし、ページを読み進めるうちに、奇妙な違和感を覚えました。

物語の中に出てくる動物たち――ウサギ、キツネ、クマ、そして一匹の黒いネズミ――のうち、黒いネズミだけがどこか異様なのです。他の動物が明るい色使いで描かれているのに対し、そのネズミはまるで鉛筆で殴り描きしたかのような暗いタッチで描かれていました。

さらに、物語を読み進めるたびに、そのネズミがページを越えて徐々に中心に近づいてくるように見えるのです。

動き出す絵本

絵本の最後に差し掛かった時、娘がぽつりと言いました。

「お母さん、このネズミ、動いてるみたい。」

私はぎょっとしました。娘がページを指差す先を見ると――確かに、黒いネズミの描かれた絵がわずかに揺れているように見えました。

「そんなわけないでしょ」と言いながらも、心臓が早鐘を打つような感覚がしました。

その夜、絵本をリビングに置いて寝室に戻りましたが、不思議な気配を感じてなかなか眠れませんでした。

娘の言葉

翌日、娘が朝食の席でこう言いました。

「お母さん、あのネズミが夜、動いてたよ。」

「動いてた?」

「うん。私のベッドの横まで来たの。でも何も言わずに消えた。」

娘がふざけているのかと思いましたが、表情は真剣そのものでした。あの絵本が原因だと思い、私はすぐに絵本を手に取りました。しかし、その黒いネズミが描かれたページだけが真っ白になっていたのです。

消えた絵本

その日、私は絵本をもう一度詳しく調べようと思い、手元に置いていました。しかし、午後になって絵本を確認しようとすると、どこを探しても見つかりません。

「絵本どこに行ったの?」と娘に尋ねても、「知らない」と首を振るばかりです。

その夜、リビングで聞こえたのはかすかなチューチューという音。それを最後に、あの絵本のことは何も分からなくなりました。

その後の奇妙な出来事

それ以来、娘が描く絵に必ず黒いネズミが描かれるようになりました。本人に尋ねても、「おともだちだから」としか言いません。

あの日の絵本は一体何だったのか――その答えを知ることはできません。そして、娘がそのネズミについて話さなくなるのを待つしかありません。



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