夏の終わり、私たちは大学のサークル仲間で肝試しをすることになった。目的地は、地元で「いわくつき」と言われている山奥の公衆電話だ。
その公衆電話は、人里離れた山道にぽつんと立っている。誰も使うはずのない場所にあるのに、夜になると妙な現象が起こるという噂が絶えなかった。
目次
不気味な噂
「夜中に電話ボックスに入ったら、自分の姿が窓ガラスに映らない。」
「中に入ると、外に出られなくなる。」
そんな噂を聞いた私たちは、興味本位でその場所を訪れることにした。肝試しといっても、正直なところ、ただの噂話に過ぎないと思っていた。
深夜1時。懐中電灯を片手に、私たちは車でその場所へ向かった。車内は賑やかだったが、目的地が近づくにつれて、自然とみんなが口数を減らしていった。
電話ボックスに到着
その公衆電話は、林に囲まれた細い山道の脇にぽつんと立っていた。周囲には人家はおろか街灯すらなく、月明かりだけが薄ぼんやりと辺りを照らしていた。
ボックスは、よくある緑色のフレームの古びたタイプ。窓ガラスには埃と小さなひび割れがあり、何年も手入れされていないようだった。
「こんなとこに電話ボックスがあるの、変だよな。」
「誰が使うんだろ?」
冗談交じりに言いながらも、全員がそのボックスをじっと見つめていた。薄暗いガラス越しに、中の電話機がぼんやりと見える。
肝試しの開始
順番を決め、一人ずつボックスに入ることにした。最初に入ったのはリーダー格のタカシだった。
「じゃあ行ってくる!」
軽い口調でボックスに入るタカシを、私たちは外から見守った。
中に入ったタカシは、受話器を取るふりをしたり、ふざけて手を振ったりして見せた。しかし、次の瞬間――彼の顔が急に硬くなった。
「タカシ?」
声をかけても反応がない。タカシは窓ガラス越しにこちらを見ていたが、その目には何か恐怖の色が浮かんでいた。そして、急に電話ボックスの扉を乱暴に開けて飛び出してきた。
タカシの異変
「どうしたんだよ?」
息を荒げるタカシに尋ねると、彼は震えながらこう言った。
「……中で、誰かの気配を感じた。」
「気配?」
「電話機の横に、誰かが立ってた気がする。でも、姿は見えないんだ。」
冗談だろうと思ったが、タカシの顔は真剣だった。
「おいおい、ビビりすぎだろ。」
そう言いながら、次に私がボックスに入ることになった。
ボックスの中での体験
扉を開けて中に入ると、ひんやりとした空気が肌を刺した。古びた電話機が正面にあり、周囲はガラスで囲まれている。普通の電話ボックスだ――そのはずだった。
しかし、妙な視線を感じる。電話機の横、何もないはずの空間に、誰かが立っているような気がするのだ。
私は懐中電灯をその方向に向けたが、何も見えない。ただ、窓ガラスに映る自分の姿に違和感があった。
「……おかしい。」
ガラス越しの自分の影が、微妙にズレている。まるで鏡が本物の自分とは異なる動きをしているような感覚だった。
恐怖に駆られ、私はボックスを飛び出した。
最後に見たもの
「お前も感じたのか?」
外で待っていたタカシが駆け寄ってきた。
「何か、影が……」
そう言いかけた瞬間、電話ボックスの中に何か黒い影のようなものが見えた。それは、ゆっくりと電話機に手を伸ばしているようだった。
「もう帰ろう!」
全員が恐怖に駆られ、その場を後にした。車に戻ると、誰も口を開かなかった。ただ、全員が同じ方向――ボックスの方を振り返ることもできなかった。
その後の噂
後日、その電話ボックスについて詳しく調べてみたが、はっきりとした情報は見つからなかった。ただ、一つだけ分かったのは、あの場所で起きた事故の話だった。
数十年前、あの電話ボックスを使って助けを求めた人がいたらしい。しかし、誰にも助けてもらえず、そのまま命を落としたという。
それ以来、ボックスに入った人は「誰かが助けを求めている感覚を覚える」と噂されているという。
もし、あなたが深夜に山奥の公衆電話を見かけたら――その中に立つ何かがあなたを見ているかもしれません。
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