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入院中の同室者は誰だったのか? 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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【プロローグ】

私が小学生の頃、1週間ほど入院したことがあった。

その時の体験は、今でも思い出すたびに不思議に思う。

入院した病室は二人部屋で、私と同い年くらいの女の子が一緒にいた。お互い同じくらいの年齢だったこともあり、すぐに打ち解けて一緒に過ごす時間が楽しかった。だが、退院の日に起きた出来事が、すべてを奇妙で不思議な記憶へと変えたのだ。

【入院初日】

病院の二人部屋に案内された時、既にもう一人の子が隣のベッドにいた。

黒髪のストレートで、少し細身の彼女は、私を見るとすぐに笑顔を見せてくれた。

「こんにちは!何日入院するの?」

「たぶん1週間くらい。そっちは?」

「私もそれくらいかな。」

年齢も近く、話しやすかったので、初日からすぐに仲良くなった。

【一緒に過ごす日々】

入院して2~3日目には、私の体調も良くなり、ベッドに横になっている時間が退屈になっていた。

隣の彼女――名前は「さやか」と言った――とは、ボードゲームやカードゲームで時間を潰したり、おしゃべりを楽しんだりしていた。

「学校、どんな感じ?」
「普通かな。でも、この前転んで怪我しちゃってさ。」

そんな他愛もない話で笑い合う日々が続いた。

夜になると、看護師さんに「そろそろ寝なさいよ」と注意されるくらい話し込んでいた。

【退院の日】

そして、いよいよ退院の日がやってきた。

「さやか、今日はありがとうね!またね!」

私はお礼を言おうと隣のベッドを訪れたが、彼女の姿はなかった。

「…あれ?」

看護師さんを呼んで「さやかちゃん、どこに行ったんですか?」と尋ねたが、看護師さんは首をかしげた。

「この部屋はあなた一人ですよ?」

私は意味が分からなかった。

「そんなはずないです!毎日さやかちゃんと遊んでたんです!」

しかし、看護師さんは困った顔をしながら、病室前のふだを見せてくれた。確かに、二人部屋であるはずのその病室に、私以外の患者は登録されていなかった。

【残された記憶】

私は混乱しながら部屋を見回した。確かに隣のベッドには誰もいない。さやかの私物も、どこにもなかった。

けれど、私は確かにさやかと過ごした記憶がある。笑い合ったこと、ゲームをしたこと、夜中に小声で話したこと…。

もしかして夢だったのかと思いながら、自分の荷物を整理していると、一枚のカードが出てきた。

それは、ボードゲームで使っていたカードの1枚で、裏にはこう書かれていた。

「また会えるといいね。さやか」

【エピローグ】

退院後、私は母親にこの話をしたが、やはり「疲れていたんじゃない?」と言われるだけだった。

あれから何年も経つが、あの病室で過ごした日々が夢だったとは思えない。そして、カードに書かれたメッセージは今でも私の手元に残っている。

あの時の「さやか」は、いったい誰だったのだろうか――。



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