怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

病室で聞いた「もう一つの声」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

重い病気にかかると、誰しも孤独を感じるものだ。

私は数年前、大きな病気で入院した経験がある。それ自体は辛い記憶だが、病室で経験した出来事は、それ以上に恐ろしく、忘れられないものだった――。

第一章:突然の発症

それは、何気ない日常が続く中で突然訪れた。

高熱とひどい体のだるさ。最初はただの風邪だと思っていたが、次第に症状が悪化し、病院に行くと即入院を宣告された。

「これは早期治療が必要です。」

医師の表情は真剣で、冗談ではないことが分かった。

入院生活が始まり、私は一人部屋での治療を受けることになった。静かで薄暗い病室は、いつも妙に冷たく感じられた。

第二章:奇妙な物音

入院から数日が過ぎた頃、私は夜中に奇妙な物音を聞くようになった。

夜中に目を覚ますと、病室の隅から「コツ、コツ……」と何かを叩くような音が聞こえてくる。

「……看護師さんかな?」

そう思いながら再び眠りにつこうとすると、音は徐々に近づいてくるようだった。

ベッドのカーテン越しに何かの気配を感じたが、疲れから目を閉じたまま動けなかった。

第三章:隣の声

翌朝、看護師にその話をすると、「気のせいですよ」と笑い飛ばされた。

しかし、夜になると再び音が聞こえた。今度は「コツコツ」という音だけでなく、誰かの低い声も混じっていた。

「……次は……お前か……。」

背筋が凍りつくようなその声は、病室の隅から響いていた。

恐怖で体が動かず、私は毛布を頭まで引っ張り、震えながら朝を待った。

第四章:病室の噂

翌日、日中に隣の病室の患者と話す機会があった。

その人は入院生活が長いらしく、「この病棟には変な話が多いんだ」と言った。

「特に夜中に聞こえる音や声。たまに、それが聞こえた後で容体が悪くなる人がいるんだよ。」

その話を聞いて、私は血の気が引いた。昨夜聞いた声と音――それは自分の病状と関係があるのかもしれない。

第五章:声の正体

その夜、私は意を決して声の正体を突き止めようと決めた。

夜中、例の「コツ、コツ……」という音が聞こえ始めると、恐怖に震えながらもカーテンを少しだけ開けた。

そこには、痩せた影のようなものが立っていた。顔はぼやけており、手には古びた何かを握っている。それが何かを叩くたびに音が鳴っていたのだ。

「……次は……お前……。」

その瞬間、私は意識を失った。

第六章:その後

気がつくと病室ではなく、緊急処置室のベッドに横たわっていた。

看護師の話によれば、夜中に容体が急変し、危険な状態だったという。

その後、私は無事に回復し退院することができたが、あの夜の出来事が忘れられない。

あの影は何だったのか、あの声が何を意味していたのか――。

今でも時々思う。もし、あの声に名前を呼ばれてしまっていたら、私は今ここにいなかったのではないか、と。



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