私は数年前、重い病気を患い、数か月間入院していました。その病気は命に関わるものではありませんでしたが、治療のために長期間ベッドに縛られる生活を強いられるものでした。
入院生活の中で、私は奇妙で恐ろしい体験をしました。それは病気による幻覚や夢だと言われればそれまでですが、私にはあれが「ただの錯覚」とは思えないのです。
目次
病室での最初の異変
私が入院していたのは、古い病棟の4人部屋でした。同室の患者は比較的静かな人ばかりで、日中は穏やかな時間が流れていました。しかし、夜になると部屋全体に妙な雰囲気が漂うことがありました。
最初の異変に気づいたのは入院して1週間ほど経った頃のこと。消灯時間を過ぎた深夜、ふと目が覚めると、カーテン越しに誰かの気配を感じました。
「看護師さんかな…?」
そう思って周囲を見回しましたが、誰もいません。眠気のせいだと思い再び目を閉じましたが、カーテンの隙間から微かに感じる視線は消えませんでした。
奇妙な囁き声
それから数日後の夜、再び目が覚めた時、今度は囁き声が聞こえてきました。それは、部屋のどこからともなく聞こえてくるものでした。
「……まだ……」
「……終わらない……」
声の内容ははっきりしないものの、不気味なほど低く冷たいものでした。同室の他の患者が話しているのかと思い、翌朝尋ねてみましたが、誰もそんなことはしていないと言います。
足元に現れた“影”
さらに奇妙なことが起こったのは、それから1週間後の深夜でした。
いつものように眠っていると、何かが足元を引っ張る感覚で目が覚めました。暗闇の中、布団の先に目をやると、そこには黒い影のようなものが立っていました。
「……誰……?」
声を出そうとしましたが、喉が凍りついたように声が出ません。影はじっと私を見下ろしているようで、その後、スッと消えるようにして消えていきました。
翌朝、看護師にその話をすると、「疲れているせいかもね」と笑って流されましたが、同じ部屋にいた別の患者が小さな声でこう言いました。
「……あの影、私も見たことあるよ。」
部屋の“過去”
それから私は、病棟の歴史を調べました。看護師にそれとなく聞いてみると、同じ病棟で過去に数件の事故があったことを知りました。
何年も前、この病棟の4人部屋で長期入院中の患者が孤独死したことがあるそうです。特に私のいた部屋では、複数の患者が「誰かに呼ばれる」と言い残して急に容体が悪化し、亡くなったこともあるとか。
その話を聞いてからというもの、私は夜が怖くて眠れなくなりました。
最後の夜
入院生活も終わりが近づき、退院を控えたある夜、再び囁き声が聞こえてきました。
「……まだ……終わらない……」
声の方向に目を向けると、そこにはあの黒い影が再び現れていました。今度は、明らかに私の方に近づいてきます。
「お前も……ここに……」
その声を最後に、私は気を失いました。翌朝目を覚ますと、看護師が心配そうに私を見つめていました。どうやら深夜に高熱を出し、意識を失っていたそうです。
退院後の後遺症
幸い、私は無事に病気を克服し、退院することができました。しかし、退院後もあの黒い影や囁き声が夢に出てくることがあります。特に体調が悪い時には、あの病室の情景が頭に蘇るのです。
今でもあの病棟が使われているのかは分かりません。ただ、再び病気になり、あの場所に戻ることだけは避けたいと心の底から思っています。
もしあなたが入院することになったら――その部屋がどんな過去を持つ場所か、少しだけ気にしてみてください。
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