目次
プロローグ
お正月は家族が集まり、平和に過ごす時期だ。しかし、それがすべての家庭に当てはまるわけではない。
私は数年前のお正月、奇妙な体験をした。それは、家族と過ごす温かい時間にひそむ、恐ろしい影のような出来事だった――。
第一章:年末の帰省
その年の大晦日、私は久しぶりに実家へ帰省していた。
両親と弟が待つ家は、田舎の静かな一軒家だ。古いけれど落ち着いた雰囲気で、お正月には家族が集まる場所としてぴったりだった。
年越しそばを食べ、テレビを見ながらのんびりしていると、母がぽつりと言った。
「今年は、家族全員が揃うね。」
その言葉に違和感を覚えた。
「全員? 誰のこと?」
「何言ってるの? 全員って、あんたとお父さん、弟、私、それから……。」
母はそこまで言って、言葉を濁した。
第二章:奇妙な訪問者
元旦の朝、静かだった家に突然、玄関のチャイムが鳴り響いた。
「こんな時間に誰だろう?」
父が玄関を開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。30代くらいの、どこにでもいそうな普通の男だったが、その顔にはどこか見覚えがあった。
「……お邪魔します。」
男は当然のように靴を脱ぎ、家に上がり込んできた。
「えっ、ちょっと誰?」
私が問いかけると、母が笑いながら答えた。
「何言ってるの? あんたのお兄ちゃんじゃない。」
「お兄ちゃん……?」
第三章:家族の記憶
私は一人っ子のはずだった。少なくとも、そんな話を聞いたことはなかった。
「ちょっと待って、何の冗談?」
動揺する私に、母は真顔で言った。
「本当に忘れちゃったの? この家には昔から、あんたとお兄ちゃん、弟の3人兄弟でしょ。」
父も弟も頷いている。しかし、私の記憶にはそんな兄など存在しなかった。
その男は、食卓に座り、普通に会話に加わっている。私の知らないエピソードを話し、家族全員が笑い合っている――私を除いて。
第四章:深まる恐怖
その夜、私は母に改めて問い詰めた。
「お兄ちゃんなんていた記憶、全然ないんだけど。」
すると母は、少し驚いたような表情でこう言った。
「そっか……あんた、小さい頃に階段から落ちたことがあったでしょ? それで記憶が一部なくなったのよ。」
確かに、幼い頃に階段から落ちたことは覚えている。しかし、それと兄がいる話が繋がる気がしなかった。
第五章:日記の秘密
その夜、物置で古い日記を見つけた。それは母がつけていた家族の記録だった。
「これで兄のことが書かれているかもしれない……。」
ページをめくると、家族の日常が綴られていたが、あるページに奇妙な一文があった。
「○○(兄の名前)が家に戻ってきた。これでまた家族が揃った。」
日付を見ると、それは私が生まれる前の日付だった。
「……戻ってきた?」
その言葉が何を意味するのか分からなかった。
第六章:消えた兄
翌朝、家族全員が集まると、昨日の「兄」がどこにもいなかった。
「お兄ちゃん、どこ行ったの?」
母に尋ねると、驚いた顔でこう答えた。
「お兄ちゃんって、誰?」
家族全員が「兄」という存在を忘れているようだった。
昨日まで一緒に過ごしたはずの男の痕跡が、家の中から完全に消えていた。
結末
それ以来、家族の話題に「兄」が上がることはない。しかし、私は今でもあの男の顔を鮮明に覚えている。
お正月のあの日、我が家に現れた「もう一人の家族」。
彼は一体、誰だったのだろうか――。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
新品価格 |
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |