お正月は毎年楽しみな行事だった。親せきが集まり、賑やかな笑い声と美味しい料理が部屋いっぱいに溢れる。その年も例外ではなく、祖父母の家にたくさんの親せきが集まっていた。
だが、その年のお正月は、少しだけ奇妙な出来事が起きた。
目次
知らない親せき
親せきたちが次々と祖父母の家に集まり、賑やかな宴が始まった。私もいとこたちと遊びながら、賑わう大人たちの会話を横目で見ていた。
その中に、一人だけ見覚えのない人がいた。白髪交じりの髪に薄い笑みを浮かべた中年の男性。大人たちと自然に話をしており、誰もその人を不審に思う様子はなかった。
「誰だろう…?」
子供心に不思議に思い、母に尋ねた。
「ねえ、あのおじさん誰?」
母は一瞬怪訝そうな顔をした後、「おじさん?そんな人いないよ。」と首を傾げた。
みんなには見えていない?
さらに気になった私は、近くにいたいとこに同じ質問をしてみた。しかし、いとこも「え?そんな人いないよ」と言う。
私が指差した先では、その男性が大人たちと談笑していた。母や親せきの誰も、その人の存在に気づいていないのだと分かった瞬間、背筋がゾッとした。
「あれ…本当に見えてないの?」
男性は時折こちらを見て、微笑むような仕草を見せた。まるで、私が唯一その存在を認識していることを知っているかのように。
男性の奇妙な行動
宴が進むにつれ、その男性はときどき私の視界に現れるようになった。食卓で話を聞いているかと思えば、気づけば庭先で一人佇んでいる。
怖くなった私は、祖父に「知らない人がいる」と訴えた。しかし、祖父は「疲れてるんじゃないか?」と笑い、気にする様子もない。
その時、男性が私をじっと見つめながら手招きした。思わずその場から逃げ出したが、振り返ると男性の姿は消えていた。
家族写真の異変
宴も終わりに近づき、恒例の家族写真を撮ることになった。大人たちが集まり、私たち子供も並んでカメラに向かって笑顔を作った。
写真が撮り終わり、すぐに確認した祖父が突然「あれ?」と呟いた。
「この人…誰だ?」
カメラの液晶画面には、私が見たあの男性がはっきりと写っていた。
「おかしいな…こんな人いたか?」
家族全員が顔を見合わせ、ざわめきが広がった。その場の誰も、男性の顔に見覚えがないと言う。
祖母の一言
その時、後ろでじっと写真を見つめていた祖母が静かに言った。
「この人…お正月に亡くなったおじの顔に似てる。」
祖母の話では、私が生まれるずっと前に亡くなった親せきの一人だという。家族で毎年正月に集まるようになったのも、その人が亡くなった年からだそうだ。
祖母がそう言った途端、部屋の空気が変わったように感じた。写真の中で笑う男性の顔が、どこか寂しげに見えたのだ。
その後
写真に写っていた男性のことは、それ以上深く話されることはなかった。しかし、私はそれ以来、あの家での正月が少し怖くなった。
あの男性は本当に亡くなった親せきだったのだろうか。そして、なぜ私には見えていたのだろうか。
あの年の正月以来、誰も知らない親せきが現れることはなかった。ただ、今でもあの日の家族写真を見るたびに、あの男性の笑顔が脳裏によみがえる。
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