目次
新年の準備
私は実家で家族と一緒に過ごすのが毎年の恒例行事だった。今年もお正月の準備を手伝うために、年末から実家に戻っていた。
実家は築50年以上の古い日本家屋で、特に大晦日とお正月は、祖母の代から受け継がれた伝統的な習慣が多い。
その中でも、「お正月の神様を迎える準備」という儀式じみた習慣があった。
お正月の神様を迎える
大晦日の夜、家の玄関に門松を飾り、神棚には鏡餅を供える。祖母から母へと伝わった教えでは、正月の夜には神様が家にやってくると言われていた。
「お正月の神様を迎えないと、不幸が訪れるんだよ。」
幼い頃はその言葉に震えながら準備を手伝ったものだ。しかし、大人になった今では、半ば迷信だと思っていた。
不可解な足音
その夜、家族は除夜の鐘を聞きながら床に就いた。私も布団に入ったが、普段とは違う異様な静けさに眠れなかった。
すると、深夜2時ごろだっただろうか――家の中から微かに足音が聞こえてきた。
「コツ……コツ……」
家族全員が寝ているはずなのに、その足音は家の廊下をゆっくりと歩くように響いている。
「誰か起きてるの?」
そう思いながら布団から抜け出し、廊下を覗いたが、そこには誰もいなかった。
神棚の異変
翌朝、家族に夜中の足音の話をしたが、誰も聞いていないと言う。
気味が悪かったが、とりあえず新年の挨拶をし、朝の準備を始めた。すると、神棚に供えたはずの鏡餅が無くなっていることに気がついた。
「鏡餅……どこいったの?」
家族全員が首をかしげた。誰も触っていないという。
そのとき、ふと祖母の言葉を思い出した。
「お正月の神様をきちんと迎えないと、不幸が訪れる。」
神様なのか、それとも……
その夜、再び家の中で足音が響いた。今度はさらに近くで、重く、はっきりと聞こえる。
布団の中で息を潜めていると、廊下を進む足音が私の部屋の前で止まった。
「コン……コン……」
ノックのような音がする。恐る恐る布団の隙間からドアを見つめると、ほんのわずかにドアが開き、何かがこちらを覗き込んでいた――黒い影のようなそれは、人の形をしているが顔はぼんやりして見えない。
朝を迎えて
次の日の朝、家族に昨夜の出来事を話したが、誰も信じてくれなかった。しかし、家中のあちこちに奇妙な汚れた足跡が残っていた。
「本当に神様だったのか……それとも、何か別のものが来たのか?」
結局、正体はわからないまま、私は次の年からお正月を実家で過ごすのをやめた。
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