私は天涯孤独の身です。親は早くに亡くなり、親せき付き合いもないまま大人になりました。友人もおらず、年末年始はいつも一人で静かに過ごします。今年のお正月もその予定でした。
しかし、今年はそれが少し違いました。
ある“何か”が、私の部屋を訪れたのです。
目次
ひとりのお正月
大晦日から元日にかけて、特に変わったことはありませんでした。テレビで紅白を眺めながら年越しそばを食べ、年が明けると缶ビールを一缶開けて布団に入りました。
元日も同じようなものでした。昼過ぎに起き、コンビニで買ったおせちもどきを食べながら、ネットサーフィンをして時間を潰しました。
「誰も訪ねてこないし、電話もかかってこない。」
そんな生活にも慣れていたはずでしたが、ふと胸にぽっかりとした寂しさを感じました。
違和感の始まり
夜になり、いつものように部屋でぼんやりしていると、ふいに廊下から足音が聞こえました。
コツ…コツ…
アパートは古い木造で、音が響きやすいとはいえ、その足音は明らかに私の部屋の前で止まるような気配がありました。
「隣の住人かな?」
そう思いましたが、足音が一度途切れた後、今度は部屋の中から聞こえてきたのです。
コツ…コツ…
一瞬、息が止まりました。部屋には誰もいないはず。私は玄関を施錠し、窓もきちんと閉めていたのに。
静かに広がる音
足音は、私の背後――キッチンの方から聞こえてきます。振り返る勇気がなく、心臓が激しく鼓動するのを感じました。
コツ…コツ…
足音はゆっくりと近づき、やがて部屋全体に広がるような感覚になりました。音の主がどこにいるのか分からなくなるほど、四方から響いているのです。
「誰かいるのか?」
恐る恐る声を出しましたが、返事はありません。ただ、その瞬間、音がぴたりと止みました。
不気味な気配
部屋が静まり返り、再び耳を澄ますと、今度は微かな囁き声が聞こえてきました。それは何語とも分からない低い声で、部屋中に反響しているようでした。
私は意を決して、携帯電話を取り出し、警察に連絡しようとしました。しかし、手が震え、画面をうまく操作できません。その時、スマホの画面が勝手に暗転し、真っ黒になりました。
画面には、うっすらと何かの顔が映り込んでいました。
異世界の訪問者
その顔は、どこかぼんやりとしており、性別も年齢も分かりません。ただ、目だけははっきりしていて、じっとこちらを見つめていました。
「帰ってきたよ。」
突然、その顔が低い声で囁きました。私は驚いてスマホを落とし、部屋を飛び出そうとしました。しかし、足がすくんで動けません。
次の瞬間、部屋の中央に暗い影が現れ、その影がゆっくりと人の形を取り始めました。それは何かを求めるように手を伸ばしてきます。
正月の後悔
「ここで一人でいるからだ。」
低い声が耳元で囁きました。その言葉は私自身の声に聞こえ、全身に鳥肌が立ちました。
影がさらに近づいてきた時、私は気を失いました。
目覚めた朝
気づくと、朝の光が窓から差し込んでいました。体中に冷や汗をかいており、昨夜の出来事は夢だったのかとも思いました。
しかし、部屋の床には無数の足跡がついていました。それは私のものではない、見たこともないサイズの足跡でした。
その足跡を見た瞬間、背筋が凍りつきました。私はあの日以来、お正月に一人で過ごすのが怖くなり、どこか人のいる場所に行くようにしています。
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