目次
初めての「空を飛ぶ夢」
その夢を見たのは、仕事で疲れ果てた日の夜だった。
気づくと、私は空中に浮かんでいた。風を切る感覚が肌に心地よく、目の前には広大な青空が広がっている。地上の景色が次第に小さくなり、まるで鳥になったような自由さを感じた。
「これが夢だなんて、信じられないくらいリアルだな……。」
飛ぶという行為にすぐ慣れた私は、地上を眺めながらあちこち飛び回った。空から見る街の灯りは美しく、その夜はただ楽しい夢として終わった。
繰り返す夢
しかし、それからというもの、毎晩のように「空を飛ぶ夢」を見るようになった。
夢の中では、少しずつ空を飛ぶ能力が向上していく。高度を上げたり、遠くの景色を見に行ったりすることが可能になった。
だが、ある夜、夢の中で異変が起きた。
空を飛んでいると、地上にぼんやりと黒い影が見えたのだ。
最初は気にしなかったが、次の夜にも同じ場所にその影が現れた。しかも、夢を見ているたびに影が少しずつこちらに近づいてきていることに気づいた。
現実に侵食する影
「夢なのに、なぜこんなにも恐怖を感じるんだ?」
その日から、現実世界でも不気味な感覚に襲われるようになった。
会社への通勤中、誰もいないはずの電車の車窓にふと目をやると、夢で見た黒い影がちらりと映り込むことがあった。
「いや、これは疲れのせいだ。」
そう自分に言い聞かせても、家に帰ると窓の外にその影が立っているような気がした。だんだんと現実と夢の境界が曖昧になり始めた。
絶望の空中散歩
そして、その夜――私はまた空を飛ぶ夢を見た。
今度は、黒い影がすぐ目の前に現れた。形は人のようだったが、顔がはっきりせず、ただこちらをじっと見ている。
「……誰だ?」
私は恐る恐る声をかけたが、影は無言のまま近づいてきた。そして、冷たい手のようなものが私の足をつかむ感触がした。
「やめろ!放せ!」
もがけばもがくほど影の力は強くなり、私は空中に引きずり込まれていく。もはや地上も空も分からなくなり、ただ真っ暗な空間に落ちていく感覚だけが続いた。
目が覚めて……
激しい衝撃とともに私は目を覚ました。
自分のベッドにいることを確認し、心底ホッとした。時計を見ると午前3時を過ぎたころ。
「なんて悪夢だ……。」
額の汗をぬぐい、ふと窓の外を見ると、真っ暗な夜空が広がっている。深呼吸して落ち着こうとしたその瞬間、窓ガラスに何かが映り込んだ。
夢で見た、あの黒い影だ。
「まだ終わってない……?」
恐怖で動けなくなった私の耳元に、かすかな囁き声が聞こえた。
「次は現実で会おう。」
その瞬間、目が覚めた――そう、本当に目が覚めたのだ。
終わりのない悪夢
ベッドに横たわりながら、私は震える手で時計を確認した。午前3時、先ほど夢の中で見たのと同じ時間だった。
窓の外を見ると、そこには何もいなかった。
「……夢だったんだ。」
そう自分に言い聞かせながらも、再び目を閉じるのが怖くて仕方がなかった。
「もし、あなたが空を飛ぶ夢を見たら、その終わりが現実かどうかを確認する方法はありません――。」
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