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孤独なFIRE生活に訪れた奇妙な体験 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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FIRE達成の孤独な日々

主人公の吉川和也(45歳)は、数年前にFIREを達成した。職場の人間関係に疲れ果て、必要な資金を貯めた後、退職して以来、都会の片隅で質素な生活を送っている。

親戚も友人もいないが、孤独は嫌いではない。朝は近所を散歩し、昼は簡単な自炊を楽しむ。夜は読書や映画で過ごす。それが彼の日常だった。

正月の喧騒にも興味がない和也は、テレビでカウントダウンを見ることもなく、普段通りに夜更かしをし、翌日はいつも通り散歩に出かけるつもりで眠りについた。

奇妙な焚火の音

元旦の朝、早起きした和也は、静まり返った近所を散歩していた。冷たい空気が心地よく、他愛のないことを考えながら歩いていると、遠くから焚火の音のようなものが聞こえてきた。

「こんな場所で焚火なんて、珍しいな」

音のする方へ向かうと、広場に小さな焚火が一つ。周りには誰もいない。

和也は少し警戒しながら焚火に近づいたが、不思議と怖さはなかった。むしろ、その暖かな光に心が引き寄せられるような感覚を覚えた。

焚火と奇妙なノート

焚火のそばに、一冊のノートが置かれているのに気づいた。古びた革の表紙で、表紙には何も書かれていない。

中をめくると、最初のページにこう書かれていた。

「あなたが燃やしたい記憶を書きなさい」

和也は首をかしげたが、誰もいないことを確認すると、試しに持っていたペンで書き始めた。

「退職する前のこと。会社の人間関係の辛さ。」

書き終えると、焚火の炎が一瞬だけ高く燃え上がり、そのページが自然に破れて火の中へ落ちた。

記憶が薄れる

その日、帰宅してから和也は気づいた。
退職前のことを思い出そうとしても、詳細が曖昧なのだ。会社名や同僚の顔は覚えているが、具体的な出来事がどうにも思い出せない。

「まさか、あのノートが本当に記憶を消したのか……?」

和也は驚きつつも、妙な安堵感を覚えた。忘れたかった過去を手放せた気がした。

ノートと焚火の効力

翌日も同じ広場に行くと、昨日と同じ場所に焚火とノートがあった。

和也は、さらにいくつかの辛い記憶を書いた。学生時代に失敗したこと、人間関係のトラブル……書くたびに焚火は炎を上げ、その記憶は曖昧になった。

数日後には、和也の心は軽くなり、散歩をしていても心が晴れやかだった。

ノートの行方

和也が広場に通う日々が続いたが、ある日、いつものように焚火とノートを探しても見つからなかった。

「もう用済みってことなのか?」

その後、ノートも焚火も見つからなかったが、不思議なことに和也はそれを追い求めることはなかった。

彼の心の中に残っていたのは、静かな満足感だけだった。

まとめ

孤独を愛し、質素な生活を楽しむ主人公が遭遇した奇妙な体験。その焚火とノートは何だったのか。特定の誰かが設置したものなのか、それとも彼だけが見た幻想なのか。



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