私は75歳になる。
天涯孤独で、親せきも友人もいないが、それを寂しいと感じたことはない。孤独な暮らしは気楽だ。毎日、自分のペースで食事をし、散歩をし、本を読む。それだけで十分だと思っていた。
しかし、最近になって妙なことが続いている。小学生のころの夢を頻繁に見るようになったのだ。
目次
懐かしい夢の始まり
夢の中で私は、小学生の頃の自分に戻っていた。夢に出てくるのは、よく遊んでいた近所の空き地や、古びた学校の教室。顔ははっきり思い出せないが、同級生たちもそこにいる。
夢の中では、私はいつも何かに追われるわけでもなく、ただ純粋に遊び、笑い合っている。その時間が不思議なほど心地よかった。
「懐かしいな……」
夢から覚めるたび、私は胸の奥にぽっかりとした穴が開いたような感覚を覚えるようになった。
現実との違和感
そんな夢を見続けているうちに、私はあることに気づいた。
夢の中で出てくる場所が、現実と少しずつ違っているのだ。例えば、昔遊んだ空き地にある木が妙に大きかったり、学校の廊下の窓から見える景色が現実とは異なっていたりする。
最初は「夢だから」と気にしなかったが、夢が続くうちに違和感が強くなった。それは、記憶の中にある風景が少しずつ改変されているような感覚だった。
夢の中の“声”
ある晩、私はまた小学生の夢を見た。今回は学校の廊下に立っていた。そこはよく知る場所のはずなのに、妙に広く、暗く感じた。
「こっちに来て。」
突然、背後から声が聞こえた。振り返ると、廊下の奥に誰かの影が見えた。
「誰だ?」
私は声をかけたが、相手は答えず、ゆっくりと廊下を歩いていく。まるで「ついてこい」と誘導しているようだった。
夢の中の不思議な教室
影を追って歩いていくと、見覚えのない教室にたどり着いた。
中には机と椅子が並んでいるが、その全てが私の身長に合ったものではなく、まるで大人用のように大きかった。窓から差し込む光もぼんやりとしていて、現実味がない。
その時、教室の中央に置かれた一つの机に目が留まった。机の上には古びたノートが置いてあり、そこには幼い頃の自分の字でこう書かれていた。
「また会いに来てね」
その文字を読んだ瞬間、私は目を覚ました。
夢の後の現実
夢から覚めた時、私は体中が冷や汗でびっしょり濡れていた。いつものように本を読もうと机に向かったが、妙な違和感が胸に残っていた。
その日、散歩の途中でふと思い立ち、小学生の頃に通っていた学校の跡地へ行ってみることにした。
学校の跡地
学校は数十年前に取り壊されていた。そこには今、新しい住宅街が建っており、昔の面影はどこにも残っていなかった。
しかし、その住宅街の一角に、一本の大きな木が立っていた。
「……こんな木、昔あっただろうか?」
その木を見上げると、幹に何か文字が彫られているのが分かった。近づいてみると、それは子供の頃の私が彫った記憶のある文字だった。
「また会いに来てね」
その後の夢
それ以来、夢を見ることはなくなった。
あの夢が何を意味していたのか、木に刻まれた文字がどうして現実にあったのか――その答えは分からない。
ただ一つだけ分かるのは、私はあの夢を通じて、何か大切なものと再会できたような気がするということだ。孤独が好きな私にとっても、あの夢はどこか温かさを感じさせるものだった。
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