目次
毎日の習慣
私は毎朝、エナジードリンクを飲むことから一日を始めていた。銘柄はいつも決まって「アビス」。
その深い紫のパッケージと独特な味わいにすっかり魅了されていた。エナジードリンクとしての効能も申し分なく、アビスを飲むと不思議と頭が冴え、仕事に集中できる気がした。
「アビスさえあれば何でもできる。」
それくらい、私の生活にとってなくてはならない存在だった。
販売終了の知らせ
しかし、ある日コンビニに行くと、いつも並んでいるはずのアビスがどこにも置いていない。
店員に尋ねると、彼は申し訳なさそうに言った。
「アビス、販売終了したみたいです。」
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
奇妙な出会い
その夜、仕事帰りにふらりと寄った商店街の路地裏。そこに、古びた自動販売機がひっそりと立っていた。
「こんな場所に自販機なんてあったかな?」
興味本位で近づくと、驚いたことにアビスが並んでいた。販売終了したはずのアビスが。
「……嘘だろ?」
戸惑いつつも、私は迷わずボタンを押した。取り出し口から出てきた缶は、確かにアビスだった。
違和感
そのアビスを飲むと、いつものように頭が冴え、体にエネルギーがみなぎるのを感じた。
だが、どこかおかしい。飲んだ後から、視界が微妙に揺らぐような感覚に襲われたのだ。
さらに翌日、出勤途中に街の景色が妙に違って見えることに気づいた。普段見慣れているはずの通りがどこか薄暗く、人々の表情もどことなく無機質だった。
「別の世界」
次の日も路地裏の自販機に立ち寄ると、またアビスが並んでいた。飲むべきか迷ったが、誘惑に勝てずにまた一本買ってしまった。
するとその夜、奇妙な夢を見た。夢の中で私は巨大な迷路の中を彷徨い、その迷路の壁には無数のアビスの缶が貼り付けられていた。
壁の向こうから声が聞こえる――。
「もっと飲めば、この世界の真実が見える……。」
目が覚めたとき、冷や汗でびっしょりだった。
自販機の消失
夢の影響もあって、次の日の夜は怖くて自販機に近づけなかった。しかし、どうしても気になり、翌々日になって再び訪れてみると、自販機そのものが消えていた。
跡形もなく、まるで最初から存在しなかったかのように。
アビスの正体
それから数日、飲まなくなったアビスのことを忘れようとしたが、どうしても頭から離れなかった。仕事中もふとした瞬間に、あの深い紫の缶が目に浮かぶ。
ある日、ネットでアビスの販売終了について調べていると、不思議な噂を見つけた。
「アビスには人の潜在意識に触れる成分が含まれていたという話がある。」
「飲み続けると“別の世界”に引き込まれる。」
その後
私はそれ以上、深く調べることをやめた。何かを知ってしまうのが怖かったのだ。
ただ、一つ確信しているのは、あのアビスを通じて私は一度、現実の向こう側を垣間見たのだろうということ。
それ以降、エナジードリンクを飲むことはなくなった。しかし、今でもあの自販機がふと現れるのではないかという恐怖と期待が、私の心の中に微かに残っている。
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