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足腰の弱った老人に起きた「奇妙な出来事」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

75歳になった私は、最近とみに足腰が弱くなったと感じている。

昔は山登りが趣味だったが、今では近所の公園を散歩するだけでも息が上がる。

それでも、一人で静かに日々を過ごすのが私の楽しみだ――あの日までは。

第一章:転倒の増加

ここ数ヶ月、よく転ぶようになった。

少し段差があればつまずき、散歩中に突然足がもつれることもある。

「年を取るってのはこういうことか……。」

そう思いながらも、手押し車を使うのはどうにも気が進まなかった。

そんな私に、さらに奇妙なことが起こり始めた。

第二章:足元に感じる違和感

ある日、家の中でふと足元を見下ろすと、影が動いたように感じた。

「気のせいか……。」

そう思い、気にしないようにしていたが、その日から奇妙な感覚が増えていった。

足の裏に、何か柔らかいものが触れるような感覚があるのだ。

最初は床に何か落ちているのかと思ったが、何もない。

さらに、その感覚は夜中に特に強くなるようだった。

第三章:夢か現実か

ある夜、布団に横になっていると、足元がじんわりと温かくなった。

「湯たんぽなんて使ってないのに……。」

そう思って足を動かそうとすると、何かがぴたりと私の足を押さえつけた。

慌てて布団をめくるが、そこには何もない。

「疲れてるだけだ……。」

自分にそう言い聞かせて眠りについたが、その夜見た夢は妙にリアルだった。

夢の中で、私は若い頃の自分の姿になっており、山道を軽快に歩いていた。しかし、足元には何かが絡みついている感覚があった。

第四章:足腰の回復

それ以降、私は不思議なことに転ぶことが少なくなった。

むしろ、足腰が少しずつ軽くなり、久しぶりに遠くの公園まで歩けるようになった。

「これは何かの偶然か……?」

そう思いながらも、健康が戻ってくることは素直に嬉しかった。

しかし、その一方で、夜になると足元の違和感が増していた。

布団の中で足を動かそうとすると、誰かが掴んでいるような感覚が消えない。

第五章:足元の「何か」

ある日、ふと足元に視線を落とすと、そこに小さな足跡がついていることに気づいた。

それは泥のような跡で、布団の端から部屋の隅へと続いていた。

「こんなもの、どこから……?」

跡を追っていくと、それは押し入れの前で途切れていた。

押し入れを開けると、中には古びた登山靴が一足置かれていた。

それは、私が若い頃に愛用していた靴だった。

第六章:過去の思い出

その登山靴を見ていると、不思議なことに若い頃の記憶が鮮明によみがえってきた。

初めて登った山の風景、一緒に山登りを楽しんだ友人たち――。

「まさか、これが原因……?」

しかし、靴を手に取った瞬間、ふっと体の力が抜け、背筋に冷たい感覚が走った。

結末:足腰の代償

その日を境に、足腰の軽さが嘘のように消え、再び転ぶことが増えた。

ただ、不思議と転んでも痛みを感じることが少なくなった。

「お前の代わりに支えてくれてたのかもしれないな……。」

そう思いながら、私はその登山靴を押し入れの奥にそっと戻した。

それ以来、足元の違和感も泥の足跡も消えたが、たまに遠くの公園に足を運ぶとき、ふと軽さを感じることがある。

それは若い頃の自分が、今でも足元を支えてくれているのかもしれない――そんな気がしている。



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