目次
プロローグ
私は天涯孤独だ。
家族も親戚もおらず、友人もいないが、それを寂しいとは思ったことがない。
長年の節約と投資で、数年前に「FIRE(経済的自立と早期退職)」を達成した私は、自宅で静かに本を読んだり、近所を散歩したりする質素な暮らしを楽しんでいた。
しかし、その平穏な日常が、ある出来事を境に揺らぎ始めた。
第一章:退屈を紛らわす日々
FIRE後の生活は、退屈と言えば退屈だが、それがまた心地よい。
朝はゆっくり起き、好きな本を読み、午後は近所の公園や図書館に足を運ぶ。
夕方には自宅で簡単な料理を作り、夜は映画やドキュメンタリーを観る――そんな単調なルーティンが私にとって理想の暮らしだった。
だが、FIREを達成したことで少し自由になりすぎたのか、最近、妙なことを始めてしまった。
第二章:燃え尽きの象徴
ある日、暇つぶしに近所のリサイクルショップに行った私は、棚の隅に奇妙なオブジェを見つけた。
それは、真鍮でできた小さなランプのようなものだったが、底には「FIRE」と彫られていた。
「何だこれ?」
直感的にそれが自分の生活に何か関係があるように思えた私は、安価だったこともあり、それを購入して自宅に飾った。
第三章:変化の兆し
そのオブジェを手に入れた日から、少しずつ奇妙なことが起こり始めた。
例えば、朝起きるとランプの中が微かに赤く光っているのを目撃した。
「気のせいだろう……。」
そう思って気にしないようにしていたが、散歩中に公園でふと立ち止まると、自分が歩いてきた道に小さな焦げ跡のようなものが残っていることに気づいた。
第四章:消える過去
さらに奇妙だったのは、自分の過去に関する記憶が少しずつ曖昧になり始めたことだ。
「学生時代、何をしていたっけ……?」
その日、本棚を漁って古い写真アルバムを見ようとしたが、アルバムは見当たらなかった。
どれだけ探しても、昔の写真や手紙といった記録が、まるで燃え尽きたかのように消えていたのだ。
第五章:不思議な体験
ある夜、ランプの光がいつもより強くなり、まるで炎が揺らめいているかのように見えた。
恐る恐る近づくと、ランプの中に何かが映り込んでいることに気づいた。
それは、私自身だった。
ランプの中で動いている自分の姿は、なぜか私が若かった頃のもので、忙しく働いていたオフィスの一角が背景に映っていた。
「これは……何だ……?」
映像の中の私は、ただ働くだけの日々に疲れ果てているように見えた。
第六章:最後の選択
その後もランプの映像は、私の人生を逆再生するように変化し続けた。
映像の中の私は、若く、生き生きとしていた頃に戻っていく一方で、現実の私は体力が落ち、心も不安定になっていった。
「このランプは……私の過去を燃やしているのか?」
そう直感した私は、ランプを手に取り、どうするべきか迷った。
このまま放っておけば、私は記憶も過去も全て失うのではないか――そんな恐怖が頭をよぎった。
第七章:燃え尽きたランプ
翌朝、私はランプを手放す決意をした。
近所の川沿いにある古い石橋の上で、それを静かに投げ捨てた。
川面に消えるランプの姿を見届けた後、私は不思議と心が軽くなった。
その日を境に、ランプが引き起こしていた奇妙な出来事はぱったりと消えた。
結末
今でもあのランプが何だったのかは分からない。
もしかすると、自分の生活に張り詰めた緊張感を与えるための象徴だったのかもしれないし、あるいは過去の自分に向き合うためのきっかけだったのかもしれない。
だが、FIRE後の生活に戻った私は、再び穏やかな日常を取り戻した。
それでも、時々ふと川沿いを散歩するたびに思う。
「まだあのランプは川底で燃え続けているのだろうか……。」
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