目次
不思議な依頼
私はフリーランスのデザイナーで、日々クラウドソーシングサイトで仕事を探している。ある日、いつも利用しているサイトで奇妙な依頼を見つけた。
「中世風の紋章デザイン募集! 報酬:30万円」
報酬が高いことに驚いたが、仕事内容はシンプルだった。依頼内容はこうだ。
「とある国の旗に使う紋章デザインを作成してください。剣と盾をモチーフにした力強いものが希望です。」
中世の紋章デザインというのは珍しいが、私はファンタジー作品が好きだったこともあり、得意分野だった。
「ラッキーな案件かも」
そう思い、早速応募してみると、すぐに採用された。クライアントのプロフィールは「H.オルディス」という名前だけで、所在地も連絡先も記載がない。
細かすぎる指示
仕事を進めていくうちに、クライアントからの指示が妙に細かいことに気づいた。
例えば、剣のデザインについて「刃の反り具合は2度だけにしてください」とか、盾の色について「この国では青と金が伝統的な色です」といった具体的すぎる要望だ。
「この国? なんだそれ?」
気になって「どの国の伝統ですか?」と質問してみたが、クライアントからは「細かいことは気にしないでください。デザインに集中してください」という返事しか来なかった。
さらに奇妙だったのは、送られてくる参考画像だ。いずれも現実世界では見たこともないような古い紙に描かれたイラストばかりで、どこから手に入れたのか不思議でならなかった。
完成した紋章
完成したデザインをクライアントに提出すると、驚くほどの速さで「完璧だ」と返事が来た。
その後、クライアントからはさらに2つの追加依頼が届いた。
1つ目は「紋章を使った軍旗のデザイン」、2つ目は「王室の勲章のデザイン」だ。
「この人、本気で中世ファンタジーの国を作ろうとしてるのか?」
報酬も高額で支払いは確実だったので、私は深く考えずに作業を進めた。だが、提出したデザインへのフィードバックがさらに奇妙さを増していった。
「この軍旗は、東の戦地で使われるものです。」
「勲章は、大司教がつけるものなので威厳を重視してください。」
まるで、実際に存在する国の話のようだった。
異世界の真実に気づく
3つ目の依頼を終えた頃、報酬がすべて支払われ、仕事は完了した。
そのとき、クライアントから感謝のメッセージが届いた。
「あなたのおかげで我が国の伝統が未来へ受け継がれます。心から感謝いたします。」
「我が国」――その言葉を見た瞬間、背筋に寒気が走った。
好奇心に駆られて、クライアントが送ってきた参考資料の画像を拡大してよく見てみた。すると、そこには奇妙な文字が書かれていた。それは私がこれまで一度も見たことのない文字だったが、不思議とその意味が理解できた。
「この紋章は、次の時代の英雄によって掲げられるだろう。」
不可解な最後
その後、私はクライアントに再度連絡を取ろうとしたが、アカウントは削除されていた。
さらに、クラウドソーシングサイトの管理者に問い合わせても、「H.オルディス」という名前の登録履歴は一切ないと言われた。
しかし、振り込まれた報酬は確かに私の口座に残っていた。
「いったい、誰が……いや、何が依頼してきたんだ?」
それから数ヶ月後、ネットサーフィンをしていた私は偶然、海外のファンタジー系フォーラムで目を疑うような画像を見つけた。
それは、私がデザインした紋章が掲げられた軍旗の写真だった。
「これはどこの国の旗だ?」
コメント欄に質問が飛び交っていたが、誰も答えを知らない。ただ、その旗はどこかの儀式で使われていたらしい。
「クラウドソーシングで出会った異世界のクライアント」
気づけば、私は異世界の国の伝統を支えるデザイナーになっていたのかもしれない。現実と空想の境界が揺らいだこの奇妙な体験、あなたなら受け入れられますか?
クラウドソーシングに潜む不思議な案件――あなたも気をつけてください。
もしかしたら、次はあなたの番かもしれません。
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