私はフリーランスで生計を立てている。主にクラウドソーシングを利用して、デザインやライティングの仕事を受注しているのだが、その日、いつものように案件を探していると、妙に目を引く依頼を見つけた。
目次
高額すぎる依頼
案件のタイトルは「異世界調査員募集」。
「なんだこれ?」と思いつつ詳細をクリックしてみると、以下のような説明が書かれていた。
【案件内容】
・指定された日時に、指定された場所に行く。
・その後、そこで起こることを体験し、帰還後に簡単なレポートを作成する。
【報酬】
30万円(完了後、即日振り込み)
「高すぎる……」
普通のクラウドソーシング案件であれば、1万円を超える報酬ですら稀だ。30万円という金額に半信半疑だったが、興味本位で応募してみた。
すると、その日のうちに依頼主からメッセージが届いた。
依頼主とのやりとり
依頼主の名前は「K」というイニシャルのみ。アイコンは真っ白な画像で、どこか不気味な印象を受けた。メッセージにはこう書かれていた。
「ご応募ありがとうございます。今回の調査は安全です。指定日時にご自宅近くの公園の大きなクスノキの下に立つだけで構いません。詳細は現地でお伝えします。」
私はますます怪しいと感じたが、指定された日時まで数日あったため、特に考えずその日はメッセージを閉じた。
指定の場所へ
約束の当日、私は夕方6時に自宅近くの小さな公園を訪れた。指定された「クスノキ」は、確かに公園の片隅に立っていた。
時間通りにその木の下に立つと、突然、空気が変わるような感覚に襲われた。耳鳴りがし、視界が歪む。
「何だ……これ?」
次の瞬間、足元が吸い込まれるような感覚に襲われ、気づけば私は見知らぬ場所に立っていた。
異世界の街並み
そこは、私が普段住んでいる街にそっくりだった。ただし、どこか違和感がある。建物の形や配置が微妙に異なり、見覚えのない看板や店が並んでいる。
空には太陽ではなく、淡い紫色の光を放つ星が浮かんでいた。道行く人々も普通に見えるが、よく見ると全員が同じような無表情で歩いている。
指定された店
事前に「現地では『白い扉の店』を訪れるように」と指示されていた。街を歩いていると、やがてその店が見つかった。白い扉に、文字の書かれていない看板が掲げられている。
店に入ると、そこは異様な静けさに包まれていた。カウンターの奥には黒いスーツを着た老人が立っており、私を見るなりこう言った。
「依頼を受けて来たのだな。」
私は無言で頷いた。
“体験”の内容
老人は私に、不思議な液体が入ったグラスを差し出した。
「これを飲み、街を歩き回ることだ。それが今回の調査の目的だ。」
私は恐る恐る液体を飲み干した。味はしない、だが、体が急に軽くなり、視界がクリアになったように感じた。
外に出て街を歩くと、先ほどまで無表情だった人々が、全員私をじっと見つめてくるのが分かった。
「……何だこれ。」
彼らの視線を感じながら歩き続けていると、街全体が徐々に歪んでいくような感覚に陥った。
帰還
気づけば私は、公園のクスノキの下に立っていた。時計を見ると、わずか数分しか経っていなかった。
「本当に戻れたのか……?」
不安になりつつ家に帰り、指定されていた通り、簡単なレポートをまとめて提出した。
報酬の振り込み
翌日、銀行口座を確認すると、30万円が振り込まれていた。
「本当に支払われるなんて……」
報酬が振り込まれていることを確認し、一連の出来事が夢ではなかったと確信した。
消えたクスノキ
その数日後、私は再び公園を訪れてみた。だが、あのクスノキはどこにもなかった。代わりに、そこには地面が新しく舗装された跡が残されていた。
「本当に現実だったのか?」
あの異世界の街、白い扉の店、無表情の人々――全てが夢のような体験だったが、報酬として振り込まれた30万円だけが、それが現実だった証拠として手元に残っている。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

