あれは、夏の夜のことだった。
その日は友人との飲み会があり、最寄り駅から徒歩で家に帰る途中だった。駅から自宅までは徒歩で20分程度の道のり。何度も歩いている慣れた道だ。夜風が涼しく、少し酔いが回った体には心地よかった。
だが、その夜、私は絶対にあり得ない状況に巻き込まれることになる。
目次
見慣れた道のはずが……
最初は特に何も違和感はなかった。駅前の賑やかな通りを抜け、暗く静かな住宅街に入る。街灯の明かりがぽつりぽつりと照らす一本道を、私は歩き続けた。
しかし、10分ほど歩いたところで妙なことに気づいた。
「ん?……さっきと同じ場所?」
右手に見える郵便ポスト、左手にある古い電柱、少し先にある赤い屋根の一軒家――これらが全て、数分前に通り過ぎた場所にそっくりだった。
「酔っているせいで道を間違えたかな……?」
そう思い、一度足を止め、スマートフォンの地図アプリで現在地を確認する。しかし、地図上では正しい道を進んでいると表示されている。
不安になりながらも、私は再び歩き出した。
終わらない景色
その後も歩き続けたが、状況は変わらなかった。どれだけ歩いても、右手に見える郵便ポスト、左手の電柱、赤い屋根の家が再び目の前に現れるのだ。
「おかしい……これ、本当に同じ場所だ。」
試しに道端に落ちていた小石を蹴ってみた。すると、数分後、またその小石が同じ位置に転がっているのを見つけた。
「何なんだよ、これ……」
次第に恐怖が湧き上がってきた。これがただの酔っ払いの錯覚ではないことを、私は直感的に理解していた。
奇妙な音と足音
それだけではなかった。歩き続けるうちに、背後から妙な音が聞こえてくるようになった。
コツ……コツ……コツ……
それは、誰かが私の後をつけてくるような足音だった。しかし振り返っても、そこには誰もいない。
再び歩き出すと、足音も同じように動き出す。
「……誰だ?」
声を張り上げても返事はない。ただその音だけが、私の背後にぴたりと張り付いてくるように続いていた。
道に刻まれた“しるし”
恐怖を紛らわせるため、私は足元に印をつけることにした。道端の砂利を使って、アスファルトに矢印の形を描いてみたのだ。
「これで戻ってきた時に分かるはずだ。」
安心しようと自分に言い聞かせながら歩き続けた。しかし、数分後、目の前に再び現れたのは、さっき自分が描いた矢印だった。
「……戻ってきてる……」
その矢印を何度も確認するたびに、心臓が締め付けられるような恐怖に襲われた。
奇妙な出会い
パニックになりながらも歩き続けると、前方に人影が見えた。それは小柄な男性だった。薄汚れた服を着ており、私に気づくと笑顔で近づいてきた。
「やあ、君も迷っちゃったのかい?」
その声は妙に明るく、状況とは不釣り合いだった。
「迷ったって……どういうことですか?ここから抜け出す方法を知ってるんですか?」
私が必死に問いかけると、男性は薄暗い表情に変わり、こう答えた。
「抜け出す方法?そんなの、俺もずっと探してるよ。」
その言葉に全身の血が凍るような感覚を覚えた。
「ずっと……?」
「そう。ここに迷い込んでから、何日経ったかも分からない。」
そう言った彼は、突然振り返ると道の奥へと走り去っていった。
抜け出すための決断
私はどうすればいいのか分からず、座り込んでしまった。もう歩いても意味がないのではないか――そんな絶望的な気持ちが頭を支配した。
しかし、その時ふと、「最初の地点に戻れば抜け出せるのではないか」という考えが浮かんだ。
「始まりに戻る……それしかない。」
私は必死に記憶を頼りに、最初に通った道を逆戻りすることにした。
抜け出した先での違和感
どれだけ時間がかかったのか分からないが、やがて見慣れた駅前の風景が目に入った。
「帰ってこれた……?」
私は全身の力が抜けるのを感じながら、自宅へ向かった。だが、自宅に戻る途中、ふと背後に視線を感じた。振り返っても誰もいない。
その瞬間、耳元で囁くような声が聞こえた。
「まだ終わっていないよ。」
その後
あの日以来、私は夜道を歩くのが怖くなった。特に静かな住宅街の一本道を歩いていると、あの時の足音や矢印の記憶が鮮明に蘇る。
もしあなたが夜道を歩く時、何度も同じ風景が繰り返されるように感じたら――それは、あなたが「道の無限ループ」に巻き込まれた兆しなのかもしれない。
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