目次
疲れ果てた帰り道
毎日、仕事と残業の連続で心も体も限界に近づいていた。その日も深夜の12時を過ぎてやっと退社。疲れ切った体で、私は最寄り駅から家までの道を歩いていた。
そんな時、ふと路地裏の一角に奇妙な露店があるのを見つけた。そこだけ薄暗い明かりが灯り、テーブルには何種類もの小瓶が並べられている。
「……こんな時間に薬を売ってるのか?」
気になって近づいてみると、テーブルの向こう側にはフードを被った中年の男性が座っていた。目深にフードをかぶっていて顔はよく見えない。
「お兄さん、疲れてるだろう。いい薬があるよ。」
突然話しかけられた私は、一瞬驚いたが、その言葉につい足を止めた。
奇妙な薬との出会い
男性はテーブルの上から一つの小瓶を取り出し、私に差し出した。それは透明な小さな瓶で、中には鮮やかな青色のカプセルが一粒だけ入っていた。
「これを飲めば、何でも一つだけ叶えられる。疲れも、悩みも全部消えるかもしれないよ。」
彼の言葉に私は苦笑いした。
「そんな魔法みたいな薬、あるわけないでしょ。」
だが、男性は不気味なくらい真剣な目でこう言った。
「信じるか信じないかは自由だ。ただ、試す価値はある。」
値段を聞くと驚くほど安く、冗談半分で購入してみることにした。
薬を飲む決断
家に帰り、テーブルに小瓶を置いて眺めていると、奇妙な感覚に襲われた。
「本当にこれを飲めば、何かが変わるのだろうか……?」
一粒飲むだけで人生が変わるなんて、ありえない。だが、何かにすがりたい気持ちがあったのも事実だ。
深夜1時、思い切ってその青いカプセルを口に含み、水で飲み込んだ。
変化の兆し
最初は何も起こらなかった。
「やっぱりただの冗談か……。」
そう思って寝ようとした瞬間、体に異変が起きた。頭の中が急にクリアになり、目の前に鮮やかな光景が浮かび上がったのだ。
それは、今までの人生の中で忘れていた「幸せな記憶」だった。小学生の頃、初めて表彰された時の嬉しさ。家族と過ごした穏やかな夕食の時間。そして、大学時代の恋人との甘酸っぱい思い出――。
疲れ切っていた心が、その記憶に癒されていくのが分かった。
願いの成就?
次の日、職場に向かうとさらに奇妙なことが起きた。
同僚たちが妙に優しく、いつも怒鳴ってばかりの上司が私に笑顔で話しかけてきた。まるで、世界そのものが変わったようだった。
それだけではない。仕事もスムーズに進み、普段ならトラブルになる案件がすべて問題なく片付いたのだ。
「……本当にこの薬のおかげなのか?」
そう思わずにはいられなかった。
不安の影
しかし、日が経つにつれ、奇妙な現象も増えていった。
街中で見知らぬ人に突然名前を呼ばれたり、家の中で微かな声が聞こえたり。
そしてある夜、夢の中であのフードの男が現れた。
「薬の効果には代償が伴う。すべてを得たと思ったとき、何かを失う準備はできているか?」
その言葉に目を覚ますと、胸がざわざわと騒ぎ、不安に駆られた。
消えた薬と露店
翌日、私はあの露店を探しに街を歩いた。何度も路地を覗いたが、どこにも見当たらない。
結局、その薬を売っていた男の正体も、薬の効果の真相も分からずじまいだった。
それ以来、私の生活は以前と比べて順調になったが、時折、あの男の言葉が頭をよぎる。
「得たものの代わりに失ったもの――それは何だったのか?」
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