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奇妙な薬局と不思議な薬 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私がその薬局を見つけたのは、仕事帰りの夜のことだった。

残業を終えて家路を急ぐ途中、いつもは何もないはずの道に、ひっそりと明かりが灯る薬局があった。外観は古びていて、木製の看板に「薬と癒しの店」とだけ書かれていた。

「こんな店、前からあったっけ?」

そう思いながらも、何となく引き寄せられるようにその薬局の扉を開けた。

不思議な雰囲気の店内

扉を開けると、中は意外にも広く感じられた。棚には所狭しと瓶や箱が並べられており、どれも見慣れないデザインだった。ラベルには英語でも日本語でもない文字が書かれている。

カウンターには白髪の老女が座っており、私が入ると静かに微笑んだ。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

その声にはどこか落ち着く響きがあり、緊張感が一瞬で和らいだ。

「いえ、特に用事はないんです。ただ、見慣れないお店だったので……」

そう答えると、老女はにっこりと笑った。

「ふふ、そうですか。でもせっかくいらしたのだから、何か一つお試しになってみませんか?」

特別な薬

老女は棚の奥から小さな瓶を取り出した。それは透明な液体が入った小瓶で、光を反射して淡い虹色に輝いているように見えた。

「これは特別な薬です。一度飲むと、あなたの願いをほんの少し叶える手助けをしてくれるかもしれません。」

「願いを叶える薬……ですか?」

私は思わず笑いそうになった。現実離れした話だと思ったが、老女の真剣な表情に圧倒され、それ以上突っ込むことはできなかった。

「一つ試してみませんか?」

そう言われ、私はなんとなく頷いてしまった。

薬を飲む

老女はその場で薬の蓋を開け、小さなガラスのスプーンに液体をすくい取ると、私に差し出した。

「飲み切らなくても大丈夫。ほんの一口で十分です。」

半信半疑でその液体を口に含むと、ふわりと甘い香りが広がり、喉を通ると同時に体が軽くなったような感覚がした。

「これでおしまいです。お代はいりません。」

「え……無料なんですか?」

「ふふ、そうです。これは試供品ですから。」

老女は微笑むばかりで、詳しい説明は何もしてくれなかった。

奇妙な変化

家に帰ると、不思議なことが起きた。

ずっと考えがまとまらず進まなかった仕事のアイデアが、突然スラスラと浮かんできたのだ。まるで頭の中が整理され、必要な情報が自然と引き出されてくるような感覚だった。

翌日、職場でそのアイデアを上司に伝えると、驚くほど高評価を得た。

「君、こんな素晴らしい案をどこで思いついたんだ?」

普段はあまり褒められない私が、その日から注目されるようになった。

薬局を探すも……

その薬の効果は一時的だったようで、数日後にはまた普通の生活に戻った。ただ、それでも仕事への自信がついたことで、日々が前向きに変わった気がする。

「もう一度、あの薬局に行ってみよう。」

そう思い、帰り道に同じ場所を探してみたが、そこには薬局どころか店があった痕跡すらなかった。ただの古いアパートの駐車場が広がっているだけだった。

その後の影響

あの薬が本当に何だったのか、いまだに分からない。ただ、あの薬を飲んで以降、不思議と仕事や生活に対して前向きになれたのは事実だ。

もしかすると、あの薬には単に私の気持ちを変える力があったのかもしれない。あるいは、ただのプラシーボ効果だったのだろうか。

それでも、あの老女の微笑みと言葉だけは今でも鮮明に思い出す。

「ほんの少しの手助けですよ。」

またあの薬局を見つけることができたら、次はどんな薬を試すのだろう――そう思いながら、今日も私はあの道を歩いている。



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