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暗夜の礫(あんやのつぶて)――闇に潜む音の恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

「夜になると、何かが窓に当たる音が聞こえるんだ。」

親友からそんな話を聞いたのは、数年前のことだった。

その時は気にも留めなかったが、後にその言葉が私の頭から離れなくなる出来事が起こった。

第一章:親友の奇妙な話

親友の山田は、都会から少し離れた山間の家に一人で住んでいた。

彼はよく、「夜になると変な音がする」と言っていた。

「窓に何かがぶつかるような音が聞こえるんだ。でも、外を見ても誰もいない。風で飛ばされた小石か何かだと思ってたけど、それにしては毎晩同じ時間に聞こえるんだよ。」

「ただの動物か風だろ?」

私は冗談めかしてそう言ったが、山田の顔はどこか曇っていた。

第二章:暗夜の礫

それからしばらくして、山田の家に遊びに行ったとき、私もその奇妙な音を聞くことになった。

夜10時を過ぎた頃、静まり返った部屋に「コツン、コツン」という小さな音が響いた。

窓の外を確認しても、暗闇の中に何も見えない。

「ほらな、これが毎晩なんだよ。」

山田はそう言ってため息をついた。

私は「ただのいたずらだろう」と笑い飛ばそうとしたが、その音には妙な不規則さがあり、どこか不気味だった。

第三章:音の正体

翌日、私は昼間のうちに家の周りを調べてみた。

すると、窓の下に小石がいくつか散らばっているのを見つけた。

「やっぱり石が当たってたんだな。」

私は山田にそう言ったが、彼は首を横に振った。

「石が当たる音にしては静かすぎるだろ? それに、どうやって毎晩同じ場所に石を投げてくるんだ?」

確かに、その通りだった。人間がやっているにしては不自然なほど正確で、しかも毎晩だ。

第四章:深夜の訪問者

その夜、私は山田の家に泊まることにした。

音の正体を確かめようと、懐中電灯を手に窓の前で待機した。

夜10時を過ぎた頃、例の音が始まった。

「コツン……コツン……。」

私はそっと窓を開け、外に光を向けた――その瞬間、心臓が凍りついた。

第五章:暗闇の中の「何か」

光が捉えたのは、ぼんやりとした影だった。

それは間のような形をしていたが、顔が異常に長く、目のようなものがギラギラと光っていた。

影は私を見つめると、手を振り上げ、何かを投げる動作をした。

「コツン!」

再び窓に音が響く。私は恐怖で動けなくなり、ただその影を凝視することしかできなかった。

第六章:山田の異変

翌朝、山田が妙に疲れた様子で目を覚ました。

「夢を見たんだ……。何か黒い影が俺の部屋に入ってきて、じっと俺を見てた。」

その言葉に私はゾッとした。

昨夜見た影は、山田の部屋の窓に向かって投石していた。その「何か」が夢に出てきたというのは偶然ではないだろう。

第七章:さらなる恐怖

数日後、山田から連絡が来た。

「昨日、音がしなかったんだ。だけど、もっと嫌なことがあった。」

「どうした?」

「朝起きたら、枕元にあの小石が置いてあったんだよ。」

その言葉を聞いた瞬間、私は背筋が寒くなった。

あの影が、ただ窓を叩くだけではなく、家の中に侵入してきたのだ。

結末

それ以来、山田からの連絡は途絶えた。

不安になった私は彼の家を訪ねたが、そこには誰もおらず、荒れ果てた空き家が残されているだけだった。

家の周りには無数の小石が散らばっており、それがまるで「礫(つぶて)」のように山田の存在を呑み込んだ証拠のように見えた。

いまだにあの音が何だったのか、あの影の正体は分からない。

だが、一つ確かなことがある――夜の静寂の中で「コツン」という音が聞こえたとき、それは暗闇が何かを狙っている合図かもしれない。



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