私は小学校の教員をしている。
この仕事に就いて10年近く経つが、今でも忘れられない夜がある。それは、数年前、私がとある田舎の小学校に赴任していた時のことだ。
その学校は築50年以上経つ木造校舎で、昼間は子どもたちの笑い声が響き渡るのどかな場所だった。しかし、夜になると、そこは別の顔を見せた。
目次
夜の学校に一人で残る理由
その日、私は学級通信の締め切りが迫っており、仕事を片付けるために夜遅くまで職員室に残っていた。
普段なら家に持ち帰って作業するのだが、あの木造校舎はなぜか集中力を引き出してくれる不思議な場所だった。時計を見ると、すでに午後10時を回っていた。
「そろそろ帰ろうかな……」
そう思っていた時だった。職員室の外から、かすかな足音が聞こえたのだ。
誰もいないはずの廊下
最初は気のせいかと思った。しかし、その足音は明らかに人のものだった。廊下を歩く音が、コツン、コツンと規則的に響いている。
「こんな時間に誰が?」
この時間帯、校舎には私しかいないはずだった。念のため、懐中電灯を手に持ち、廊下に出てみた。
廊下は薄暗く、外の街灯の光が窓からぼんやり差し込んでいるだけだった。足音の方向に耳を澄ませながら歩いていくと、それは体育館の方から聞こえてきた。
体育館で見た“影”
体育館の扉を開けると、薄暗い中にぽつんと何かが見えた。ステージの上に人影のようなものが立っていたのだ。
「誰だ?」
思わず声をかけたが、返事はない。ただ、その影はじっとこちらを見ているように感じた。
恐る恐る体育館の中に入ると、突然、バタンッ!という大きな音がして扉が閉まった。
慌てて振り返るが、そこには誰もいない。もう一度ステージを見ると、影はいつの間にか消えていた。
子どもたちの声
急いで体育館を出て職員室に戻る途中、今度は子どもたちの笑い声が聞こえた。
「うそだろ……こんな時間に?」
声のする方を見てみると、3年生の教室の前に光が漏れている。教室の明かりは消しておいたはずだ。それなのに、誰かが中にいるのか、カーテンが揺れているのが分かった。
意を決して教室の扉を開けると、そこには誰もいなかった。ただ、一つだけ奇妙なことがあった。
机の上に、授業中に使うはずのノートが何冊も開いた状態で置かれていたのだ。ページには子どもたちの字でびっしりと文字が書かれていたが、そこにはこんなことが書いてあった。
「遊ぼうよ」「ここにいるよ」
その瞬間、全身に鳥肌が立った。
職員室に戻ると……
急いで職員室に戻り、荷物をまとめて帰ろうとした。しかし、職員室に戻った瞬間、机の上にあるものに目が止まった。
それは、体育館のステージに立っていた影と全く同じ姿を描いた絵だった。
「これは……」
その絵は、数日前に3年生の美術の授業で描かせた「学校で見た不思議なもの」というテーマの作品だった。
「学校で見た不思議なもの……」
その時、私はその絵を描いた児童の言葉を思い出した。
「先生、この人、夜になると体育館にいるんだよ。みんな知ってるよ。」
その時はただの子どもの想像だと思って聞き流していたが、今になってその意味が重くのしかかった。
翌日、子どもたちに尋ねると……
翌日、私はその絵を描いた児童に改めて尋ねてみた。
「ねえ、この絵の人について教えてくれる?」
その子は少し驚いた顔をしながら、こう答えた。
「だって、夜の体育館に行くといつもいるんだよ。目が合うと消えちゃうけど、たまに廊下まで来るんだ。」
「それ、本当に見たの?」
私が聞くと、その子はニコッと笑いながらこう言った。
「うん。でも、見ちゃダメだよ。遊びたくなるから。」
それからは……
それ以来、私は夜遅くまで学校に残ることをやめた。あの「影」が何だったのかは分からないし、確かめる気にもなれない。
ただ一つだけ言えるのは、学校という場所は、昼間と夜とでまったく別の顔を持つ場所だということだ。もしあなたが夜の学校に足を踏み入れる機会があるなら、どうか気をつけてほしい。そこには、昼間とは違う“何か”がいるかもしれない。
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