怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

ゲームの中に宿る意志 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私はゲーム制作会社に勤めている。職種はプランナーで、新しいゲームの企画や世界観を作るのが主な仕事だ。ゲームの制作には膨大な時間と労力がかかるが、自分のアイデアが形になるのを見るのは格別の喜びだ。

だが、数年前に携わったあるプロジェクトでは、どうしても説明がつかない出来事が次々と起こり、今でもそのことが頭を離れない。

新作ゲームの企画

そのプロジェクトは、当時の会社の社運をかけた大規模なRPGだった。壮大なストーリー、魅力的なキャラクター、多彩なゲームシステム――全てが集大成となるべきタイトルだった。

私は、そのプロジェクトの中心メンバーとして、ゲームのメインストーリーを考える役割を任されていた。

テーマは「輪廻転生」と「魂の記憶」。プレイヤーが過去の人生の記憶をたどりながら、現在と未来を切り開くという内容だった。自分でも「面白いテーマだ」と感じていたし、チームのモチベーションも高かった。

不思議なインスピレーション

ストーリーを書いていると、妙にスムーズにアイデアが浮かんでくることに気づいた。普段なら煮詰まって何時間も悩むような場面でも、気がつけば手が止まらず、どんどんシナリオが完成していった。

特に印象に残っているのは、ストーリーの核心部分となる「古代文明の記憶」を描いたシーンだ。プレイヤーが古代の遺跡を探索し、かつて存在した高度な文明とその滅亡の理由を知るという設定だった。

私は、その場面の細部を緻密に描き、古代の神殿や文字、登場するキャラクターのバックストーリーまで作り上げた。

しかし、後になって驚いたことに、完成したストーリーのいくつかの要素が、現実に存在する神話や遺跡と酷似していることに気づいたのだ。

奇妙な一致

ある日、ふとしたきっかけで「古代文明」に関する書籍を手に取った。その中に書かれていた神話の内容や遺跡の描写が、私が作り上げたゲームのストーリーにそっくりだった。

例えば、ゲームの中で登場する「魂の記憶を刻む石碑」というアイデア。これが、実際に南米のある遺跡にある石碑とほぼ同じ役割を持つものだったのだ。

「偶然……なのか?」

しかし、私がそれらの神話や遺跡について事前に知っていたわけではない。プロジェクト開始前にそんなリサーチをした記憶はなかった。

さらに奇妙なことに、私が考えたキャラクター名や地名の一部も、現実の古代文字に近い形で意味を持っていることが分かった。

夢の中のシーン

プロジェクトが佳境に入る頃、私は連日の長時間労働で疲れが溜まり、家に帰るとすぐに眠り込む日々が続いていた。

そんなある夜、私は不思議な夢を見た。

夢の中で、私は広大な砂漠の中を歩いていた。視界の先には巨大な神殿があり、その中に入ると壁一面に古代文字が刻まれていた。その文字を読むと、頭の中に鮮明なイメージが湧き上がり、まるで誰かが語りかけてくるような感覚を覚えた。

目が覚めた時、その夢で見た光景をはっきりと覚えていた。そして、それをそのままストーリーの一部に組み込むことにした。

テストプレイ中の異変

ゲームが完成間近となり、社内でテストプレイをする段階に入った時のことだ。私はあるシーンをプレイしていると、突然背中に寒気を覚えた。

それは、例の「古代文明の記憶」に関するシーンだった。プレイヤーキャラクターが神殿を探索し、謎の石碑を解読する場面で、画面上に妙な文字列が一瞬だけ表示されたのだ。

「今の……なんだ?」

一瞬のことで内容を読み取ることはできなかったが、それが私が夢で見た文字と酷似しているように思えた。

「こんなデータ、入れた覚えはない……」

開発チームに確認したが、誰もその文字列の存在を把握していなかった。

リリース後の反響

最終的にゲームは無事リリースされ、大きな反響を得た。ユーザーからも「深いテーマ」「圧倒的な世界観」と高い評価を受け、私たちの会社にとって大成功となった。

しかし、一部のユーザーから奇妙な報告が寄せられた。

「ゲームをプレイしていると、現実でも不思議な夢を見るようになった。」
「ストーリーの内容が、自分が幼い頃に聞いた話と同じだった。」

これらの声を聞いた時、私は背筋が寒くなった。あのゲームには、何か「意志」のようなものが宿っていたのではないか――そう感じざるを得なかった。

いまだに残る謎

今でも、そのプロジェクトを振り返るとき、あのスムーズすぎる執筆作業や奇妙な一致、そして夢で見た光景が頭をよぎる。

あのゲームは本当に私たちの手で作り上げられたものだったのだろうか。それとも、どこか別の「意志」が私たちを通じて語りたかったのだろうか。

もしあなたがゲームをプレイしている時、何か現実と重なるような体験をしたら――それは、ゲームに宿る「何か」からのメッセージかもしれない。



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