目次
【プロローグ】
私は仕事の都合で、築50年を超える古いアパートに引っ越してきた。家賃が安く、駅にも近いという理由で決めたのだが、住み始めてから徐々にこの場所に不安を覚えるようになった。
夜になると、このアパートはまるで生き物のように音を立てるのだ。
古い建物特有の、木材がきしむ音――それ自体は珍しくもない。だが、その音は明らかに規則性があり、どこか「意図的」に聞こえた。
【最初の軋む音】
引っ越し初日、夜遅くまで荷物を片付けていた私は、ふと妙な音に気づいた。
ギ…ギシ…ギシ…
まるで誰かが廊下を歩いているような音だった。
「…上の住人かな?」
そう思ったが、上の階は空室だと大家から聞いている。
「古い建物だし、軋んで鳴ってるだけだろう。」
無理やり自分を納得させ、そのまま作業を続けた。だが、音はその後も規則的に響き続けた。
【2回目の音と異変】
翌日の夜、仕事から帰宅してシャワーを浴びていると、再び音が聞こえた。
ギ…ギシ…ギシ…
音は、廊下を誰かがゆっくり歩いているようなリズムで続いていた。
「…まさか泥棒?」
タオルを巻いたまま浴室を出て、廊下を覗いたが、そこには誰もいなかった。
しかし、音はその時も続いていた。今度は明らかに私の部屋の中から聞こえる。
【部屋の異変】
音の出どころを探して部屋を歩き回ると、音はクローゼットの方向から聞こえていることに気づいた。
クローゼットの扉に耳を近づけると、音はますますはっきりした。
ギ…ギシ…ギシ…
何かが動いているような音だった。
勇気を振り絞り、扉を一気に開けた。だが、中には何もない。ただ、古い木の棚があるだけだった。
「気のせいか…?」
そう思い直して扉を閉めたが、その瞬間、背後で「コン…コン…」とノックするような音が響いた。
【奇妙な体験】
その夜、私は眠ることにしたが、深夜1時過ぎに再び音が響き始めた。
今度はベッドのすぐ下から聞こえる。
ギシ…ギシ…
目を開けて耳を澄ませると、音は次第に大きくなり、何かがベッドの下を這い回っているように感じた。
「誰かいるのか…?」
恐る恐るベッドから身を乗り出し、床を覗き込もうとしたその時――。
音が突然ピタリと止んだ。
【大家の話】
翌日、恐怖に耐えきれなくなった私は大家を訪ねた。
「夜になると変な音が聞こえるんです。特にクローゼットとベッドの下から…。」
大家は、私の話を聞いて一瞬だけ顔を曇らせたが、すぐに笑顔を作ってこう言った。
「古い建物ですからね。木材が鳴るんですよ。気にしないでください。」
しかし、大家の態度にはどこか不自然さがあった。
「前にこの部屋に住んでいた人はどうだったんですか?」
そう尋ねると、大家は少し間を置いて答えた。
「まあ…気にする人もいましたが、大したことじゃありませんよ。」
【真夜中の対峙】
その夜も例の音が聞こえた。
ギ…ギシ…ギシ…
音は徐々に私のベッドの周りを円を描くように移動しているようだった。
もう我慢の限界だった私は、音がする方向に向かって懐中電灯を照らしながら声を上げた。
「誰なんだ!そこにいるのは!」
すると、音がピタリと止まり、部屋の中が不気味な静寂に包まれた。
しかし、次の瞬間――
クローゼットの扉がゆっくりと軋みを上げながら開いた。
【正体】
クローゼットの中には、古い木の棚が静かに佇んでいた。だが、よく見ると棚板の隙間から何かが覗いている。
それは、無数の細い手のようなものだった。
「…何だこれ…!」
私は後ずさりながら目を逸らそうとしたが、目を離すことができなかった。手はゆっくりと棚から出てきて、まるで私を招くように動いていた。
その瞬間、部屋全体がギシギシと軋む音を立て始めた。音はますます大きくなり、私の意識はそこで途切れた。
【エピローグ】
翌朝、目を覚ますと、私はクローゼットの前で倒れていた。
不思議なことに、音は完全に止み、それ以来聞こえることはなくなった。
しかし、あの木の棚を見るたびに、微かに軋む音が頭の中で蘇る。
もし古いアパートで軋む音を聞いたら、それは単なる木材の音ではないかもしれない――そこには、何かが潜んでいるのだから。
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