小学5年生のある日、学校が終わり、私はいつものように友人のタカシと一緒に下校していた。青空が広がる穏やかな午後だったが、あの日見たものは、今でも忘れられない。
目次
奇妙な雲
学校から家までの道は田んぼが広がる一本道。自転車が数台通るだけの静かな道を、タカシとくだらない話をしながら歩いていた。
その時、ふとタカシが空を指さして言った。
「なあ、あの雲、変じゃない?」
見上げると、真っ青な空にぽつんと白い雲が浮かんでいた。その雲は普通の雲と違って、どこか奇妙だった。形が異様に整っていて、まるで誰かがハサミで切り取ったような、四角い形をしていたのだ。
「本当だ、四角い……」
私たちはしばらく立ち止まり、その雲を眺めていた。他の雲は風で流れていくのに、その雲だけは全く動かない。それどころか、まるで私たちを見下ろしているように感じた。
近づいてくる雲
「何だろうな、あれ?」
タカシがそう言った次の瞬間、雲がゆっくりと動き始めたのだ。私たちの頭上に向かって、ゆっくりと――だが確実に近づいてくる。
「動いてる! あれ、俺たちの方に来てない?」
タカシの声に、私の心臓はドキリと鳴った。雲は確実に私たちの頭上に向かって降りてきている。普通、雲が動いてもそんなに近づいてくることなんてないはずだ。
「逃げよう!」
タカシが叫び、私たちは慌てて走り出した。
逃げてもついてくる
田んぼ道を全力で走るが、雲は相変わらず私たちの上空を追いかけてくる。まるで雲そのものが生きているかのようだった。
「なんで追いかけてくるんだよ!」
タカシが叫ぶが、答える人なんているはずもない。途中で何度も振り返ったが、雲は一定の距離を保ちながら、私たちをじっと見つめているようだった。
異様な静けさ
必死で走り続け、近くの神社にたどり着いた時だった。神社の鳥居をくぐった瞬間、耳がキーンとなるような感覚に襲われた。
周囲が異様に静かだった。風の音も、鳥のさえずりも、すべてが消えている。
「ここ、いつもと違う気がする……」
タカシも息を切らしながらそうつぶやいた。見上げると、あの雲は神社の境内に浮かんでいたが、今度は形を変え始めていた。
雲の中に見えたもの
四角い雲は徐々に人の顔のような形になり、やがて不気味な目が現れた。
「うわっ、目がある!」
私たちはその場に立ち尽くした。雲は完全に人間の顔の形になり、こちらをじっと見つめているように感じた。
「……なんだよ、これ……」
タカシが震える声で言った時、雲の中から低い声が響いたように聞こえた。
「帰れ……」
その声を聞いた瞬間、私たちは無意識に背を向け、全力で神社を飛び出した。
家に帰ってからの異変
家に帰ると、体が鉛のように重く感じ、布団に倒れ込むようにして眠った。翌朝目を覚ますと、昨夜の出来事が夢だったのではないかと思ったほど現実感がなかった。
しかし、通学路を歩いていると、タカシがひそひそ声で言った。
「なあ……空見た?」
「え?」
彼の指す方を見上げると――そこにはあの雲があった。ただし、今度は私たちを追ってくるような動きはなく、ただ遠くからこちらを見ているようだった。
「……何だったんだろうな、あれ。」
その後、あの雲を見ることはなくなったが、それ以来、空を見上げるたびに不安を覚えるようになった。
最後に……
あの日見た雲が何だったのか、いまだに分からない。ただ、あの雲が私たちを「見ていた」ことだけは間違いない。
もし、あなたが空を見上げた時、動かない雲がこちらを見つめているように感じたら――その時は、すぐにその場を離れた方がいいかもしれない。
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