目次
自分に取り柄がないと思っていた日々
私は30代半ばの会社員です。特別な趣味もなく、何かに秀でた才能があるわけでもありません。
「お前は何が得意なんだ?」と上司に聞かれても答えられず、友人からも「もう少し打ち込めることを見つけなよ」と軽く言われるたび、心のどこかで自分に自信がなくなっていくのを感じていました。
不思議なカフェとの出会い
そんなある日、休日の散歩中にふと目に留まったのが、小さな看板でした。
「特別な才能を見つけるカフェ」
そんな文字が手書きで書かれたシンプルな木の看板。普段なら素通りしてしまうのに、その日はなぜか気になってしまい、思わず立ち寄ることにしました。
そのカフェは、まるで絵本から飛び出したような内装でした。木の温もりが感じられるテーブルや椅子、壁には年代物の時計や小さな絵が飾られていて、とても落ち着いた雰囲気でした。
不思議なメニュー
席に案内され、メニューを手に取ると、飲み物や食べ物の名前が書かれているページの後に、一風変わったページがありました。
そこにはこう書かれていました。
「才能を見つける特別なメニュー:選んだものがあなたの取り柄を示します。」
他のお客さんも何人かいるようでしたが、皆静かにそのメニューを見つめていました。私は半信半疑ながらも、面白そうだと思い、メニューの中から一つを選んで注文しました。
私が選んだのは、「記憶のシナモンティー」という名前の紅茶でした。
才能が示された瞬間
紅茶が運ばれてきて、店員さんが笑顔で一言、こう言いました。
「お客様は“記憶の力”が特別な取り柄のようですね。」
「記憶の力……?」
何のことか分からず紅茶を飲んでみると、突然、幼い頃の記憶が鮮明に蘇ってきたのです。それは、私が学校で開催された読書大会に参加していたときのことでした。本を読むことが大好きだった私は、読んだ本の内容を細かく覚えており、それが高く評価されて優勝した記憶です。
忘れていたその記憶が、シナモンティーを飲むたびに次々と蘇ってきました。そして、それだけでなく、他の出来事や人の話した言葉までが、まるで頭の中で映像のように浮かび上がるのです。
記憶力を取り戻す日々
そのカフェに通い続けるうちに、自分が実は「記憶力」という取り柄を持っていることに気づきました。
私は、それを仕事にも生かせるのではないかと思い、試してみることにしました。会議の議事録をとるスピードが早くなり、内容も正確になったことで、上司や同僚からの評価が上がりました。さらに、友人たちとの会話でも、相手が忘れていた話題を的確に思い出させてあげることで喜ばれるようになりました。
不思議なことに、あのカフェでの体験をきっかけに、人生が少しずつ前向きに変わっていったのです。
カフェが消えた日
そんな日々が続いたある日、ふとまたカフェに行こうと思い立ち、散歩がてらその場所へ向かいました。しかし、いくら歩いても、カフェの看板が見当たりません。
道を間違えたのかと思って周囲を探してみましたが、どこにもありませんでした。代わりに、そこには古びた民家が立っているだけでした。
「そんなはずはない……あれだけ通ったのに。」
驚きと寂しさが入り混じった気持ちで家に戻りましたが、不思議と後悔はありませんでした。むしろ、あのカフェが私に気づかせてくれた取り柄のおかげで、自分の人生を少しずつ変えることができたという感謝の気持ちが心に広がっていました。
今でも活きる「取り柄」
それ以来、そのカフェに行くことはできませんでしたが、私の中で記憶力という取り柄は今でも生き続けています。
あのカフェが何だったのかは分かりません。しかし、もしあなたが「自分には何の取り柄もない」と思うことがあれば、どこかにあなたの才能を示してくれる場所があるのかもしれません――私が出会ったあの不思議なカフェのように。
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